彼女の休日2
◇
「カラオケ行こー」
とある日曜日。昼下がり。ソファに寝転び携帯を弄っていた殿の一声。
「今から?」
突然言い出すのはいつものことだけど。
「えーとね、貫田クン来てからー」
「・・・・・・は?」
「呼んでみたー」
「・・・え~・・・」
貫田さんとは、あれから挨拶くらいしかしていない。
なかったことに、って言ったけど、やっぱり気まずいのだ。
由宇衣さんのブログも見てるけど、コメントが残せない。
「仲直りしてほしくてー」
「そうそう、ぎこちなくてが見ててイラっとするから」
「なのでー、今日ちゃんと前みたいにしてね!」
「・・・・・・善処します」
そりゃあ、前みたいに話したい。
簡単にはいかないけど。
「いつ来るの?」
「さあ?日辻家集合としか送ってないし、そのうち来るんじゃない?」
え、何そのいい加減さ・・・。
いやいつもだけど。
「それまでごろごろしてるー」
殿は言葉通りソファでごろごろし始めた。
あたしたちの間では、店で直接待ち合わせのときしか時間指定はしない。
だけど慣れてない貫田さんにまでそうするか。ちょっと吃驚するんじゃないだろうか。
あたしからフォローをいれようにも、連絡先知らないし・・・。
1時間後、貫田さんが現れた。
「あの・・・俺は何で呼び出されたんでしょう・・・?」
恐る恐る尋ねる貫田さんに、殿は言い放った。
「カラオケ行くため!」
「は?」
貫田さん目がテン。まぁそうなるよね。
「カラオケ行くから呼ばれたんですよ。ってことで行きましょう」
あんまり説明になってないと思う。
「2人とも言い出したら聞かないから・・・諦めてください」
「・・・そうだね」
貫田さん苦笑い。
あー挨拶以外で話したのは久し振りだ。嬉しい。
殿と若が先行して行ってしまったため、貫田さんと2人並んで歩く。
「日辻さんってカラオケよく行くの?」
「2人に引き摺られてよくいきますけど・・・あんまり好きじゃないんですよね」
「確かにあんまり歌うイメージないかも」
「音痴なんで嫌なんですよ」
ただ2人の歌を聴くのは好きだからカラオケは嫌いじゃない。
音痴なのは2人とも知ってるわけで、もう慣れてるし恥ずかしくもない。
だけど今日は貫田さんがいるし、歌いたくないな。
いつも行くカラオケボックスは徒歩数分の場所にある。
若がさっさと受付を済ませる。
アルコール含飲み放題付フリータイム、JOY部屋。
それで2500円なので、かなり安いと思う。
「よーしうたうぞー!」
さっそく殿が選曲を始める。
放っておくと若と殿はがっつり曲を入れ予約でいっぱいになる。
あまり歌いたくないあたしとしては、それは大助かりなのだが。
「貫田さんも何か入れてください」
デンモクを渡す。
「いつも何歌うんですか?」
「んー、ミス○ルとかスピッ○とかバ○プとか・・・割と何でも歌うけど・・・。日辻さんは?」
「あー・・・東京事○とかEL○とか・・・」
貫田さんと話しているうちに、最初の曲が始まった。
何で○ラ○イカ。古いよ。
殿と若はいつものようにアニソンとかボカロ曲とかネタ歌満載の選曲。
そうなるとあたしも貫田さんも釣られるというか。
オタ4人集まればそうもなるわな。
履歴がすごいことになった。
履歴を見た人の反応が気になる。
アルコールも飲み放題なので、結構飲んだ。
カラオケを出るころにはほろ酔い状態。
殿はテンションMAXだ。
「というわけでー今から貫田クンちで飲み直しまーす」
「え!?志村さん、明日月曜ですよ、仕事です」
「だいじょうぶだいじょうぶ、ちょっとだけ!ね?」
「えー・・・と、ちょっとだけなら・・・」
ただいまの時刻、21時である。
皆家は近いので、飲みすぎなければ明日に支障はないと思う。
ただ殿はすでに飲み過ぎだ。
ちょっとと言ってるけど、ちょっとで済むのか疑問。
甘いなぁ、貫田さん。
いざとなったら殿は捨てよう。
あたしは絶対、0時には帰る。
次の日が仕事の日は早く寝ることに決めているのだから。