彼の試練
◇
「今日は・・・枝豆と里芋コロッケと、レバ刺しと、桜ユッケ・・・タコライスで!」
初っ端から飛ばすなぁ。
彼女の中で最初の炭水化物はデフォらしい。
其々のアルコールと刺身の盛り合わせを注文し、アルコールが来たところで乾杯。
「あ、里芋コロッケ旨い」
「でしょー?」
今日の日辻さん、テンション高めだ。
運動後のアルコールだから吸収率が高いのかなぁ。
しかしいつもよりピッチ早い気がするんだけど・・・大丈夫か?
家は近いし大丈夫だろうが。
バレンタインが終わったばかりで、やはりその話になる。
志村さんは予想通り、かなりの数を貰ったそうだ。
逆に刑部は少ない。
どこの店が美味しかったとか、どのメーカー率が高いとか、御返しはどうするか、など。
志村さんは俺と同じで貰うときに御返しが出来ないことを言ってるそうだ。
刑部は御返しする派。
これはちょっと意外だった。
「ゆりなちゃんのチョコはどうでした?」
「江藤さんのは・・・ピエール・マルコリーニだった」
「むむ、やるなー・・・いやしかし手作りじゃないのが不思議ー」
「いや手作りで彼女に対抗はムリだと悟ったんじゃないか?」
「なるほど、一理ある。正攻法で由宇衣さんに勝てるわけがない」
「いやいやいやいや何の話ですか」
江藤さんの俺攻略法の分析?
やめてくれ。
その後もぐだぐだしつつ、飲み続ける。
そして2次会と称し当然の如く俺の家。
いや良いんですけどね。
そして試練はここから始まった。
◇
まず、志村さんがこの後用事があると抜けた。
それは良い。
その後、刑部に着信があり、急用が出来た、と。
”椿をよろしく”
と、言い残して。
ちょ、まてぇ!
好きな女と二人きり、密室。
それはまずいんじゃないだろうか、まずいに決まっている。
手を出さない自信はない。
特に今日はちょっとまずい。
何故ならば、今日の日辻さんはちょっと酔っぱらい気味だからだ。
「ひ、日辻さん・・・送って行くから帰ろうか・・・?」
頷いてくれ、頼む。
日辻さんのためなんだ!
「えー・・・もっと飲みましょうよー。由宇衣さんのおはなししましょう!!」
あああああ。
絶望した!
酔っぱらってるせいか、普段よりにこにこしていて可愛らしい。
可愛らしいけど、今この時はしかめっ面の方が良かったな!
ちびちび飲みつつ、由宇衣の話をする。
偽りありだけど、自分の素の話なので割と問題なく話せる。
今なら少しくらいミスっても日辻さん気付かなそうだし。
「いいなぁ・・・由宇衣さん」
由宇衣に嫉妬する日が来ようとは。
何でこんなに慕われてるのかわからない。
もし俺が由宇衣だって言ったら、どうなるだろう。
・・・うん、間違いなく嫌われるな。
日辻さんの瞼が閉じかける。
「寝る?ベッド使って良いよ」
「ん・・・・・・」
もう寝てる?
横抱き基お姫様抱っこでベッドに運ぶ。
これが間違いの元だったんだ・・・。
◇
ベッドに横たえる。
「ん・・・」
身動ぎする。
いやもうそれだけでかなりクる。
どうしてくれよう。
いやどうもしないけど。
どうも、しない、けど・・・。
視線は脚ですけど何か。
いやほら見るのはタダだしね、害もないよね。
生足じゃないけど、パンツの上からでもわかる脚線美。
白い首筋とか鎖骨とか。
あーじっくり見るとやばいよね。
視姦っていうんだよね、わかります。
よしやめよう。
そして事件は起こる。
毛布を被せようとしたところで、日辻さんが身動ぎし、その拍子にベッドに手をつく体制に。
立ち上がる為にもう片方の手をついたところで、日辻さんが寝返りを打ち。
要するに、密着。
うおあああああやばいぃぃい!
近い、近過ぎる!
誘惑に負けそう!
何この至近距離。
動けない、動けない!
心臓がどくどくする。
そしてそのとき、日辻さんが薄らと目を開けて。
微笑んだ。
うわあああああ反則だろおおおおおおぉぉぉ!
そろそろと手を伸ばし、彼女の顔に触れた。
俺の手に擦寄るように甘えてくる。
うわ何コレ、ヤバイ。やばすぎる。
帰って来て刑部ぇ!
俺の理性は崩壊寸前。
そのまま指で唇に触れる。
・・・甘噛みされた。
もうダメだ。
理性?何それ美味しいの状態に陥る。
キスすると目を瞑る。舌を差し込むと絡めてくる。体に触れても抵抗しない。
これはもうオッケーってことですよね!?
そのままベッドに伸し上がり、服を脱がせながら体に触れる。
夢にまで見た日辻さんのカラダ。
想像通りの脚線美。
腹筋が薄ら割れてて逞しい。
何ていうか日辻さんらしいなぁ。
日辻さんが気持ちよさそうにしている。
喘ぐ合間に俺を呼ぶ。
夢じゃないよなぁ。
夢落ちだったら泣くわ。
そう思いながら体に触れて、繋がって。
抱き合って眠った。