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彼女と彼




貫田雄大ぬきだゆうだい

気に食わない。



「ね、貫田さん、偶には飲みに行きましょうよ」


「ごめんね、彼女が夕飯作って待ってるから」


社内ナンバーワン(心のマドンナ)・江藤ゆりなちゃんのお誘いを、さらりと断るこの男。

貫田雄大こそ、あたしの天敵、恋敵。


とは言っても別にあたし、レズビアンではない。

ただかわいい女の子が好きなだけだ。

その証拠に過去、男と付き合ったことはあるし、女の子に欲情したことはない。


貫田雄大ぬきだゆうだい、28歳、独身。

半同棲中の彼女あり。

営業2課の有望株。来期主任だという噂。

顔も整っていて、背も高い。さわやか系で仕事も出来るので女性社員に人気。

人当たりもよく、面倒見もよく、先輩は立てるので男性社員にも慕われてる。

隙がなさ過ぎて、ムカツク。


あたしのゆりなちゃんの誘いを断るだなんていい度胸。

夜道に気をつけろよ、イ○ポ野郎。


しっかし、ゆりなちゃんに見向きもしないだなんて、彼女ってどんだけ美女なんだろ。

気になる。





日辻椿ひつじつばき、25歳、独身。

大学はストレートだったので、入社3年目。

3年間同じ部署なのに、中々親しくなれない。

今時珍しい黒髪で、カッコイイ系の美人。


ちょっと変わっている人で、クールっていうかドライっていうか。

口も意外と悪い。

本が好きだって聞いたことがあるけど、ジム通いもしているって話で、インドアなのかアウトドアなのかよくわからない感じだ。


飲み会には出席するけど、少人数の集まりには参加しているのを見たことがない。

よく話しているのは刑部おさかべと1課の志村先輩。

何の話してるのかな。


内勤の社員の中でいうと、仕事は出来る。

だけど男性社員からの人気はあまりない。

きつめの顔立ちだから、取っ付き難いせいだろう。

人気がない方が、俺としては都合が良い。


そう、俺は彼女が好きなのだ。

とある理由により、彼女がいると偽装している。

そのため彼女に表だってアプローチが出来ないのがツライところだ。

まぁどちらにせよイバラの道。

だって俺は彼女に嫌われてる。

あれかな、ナンパヤロウは嫌い、的な?

江藤さんとかに囲まれてると必ずと言って良いくらい、睨まれる。

”仕事しろよ”って感じなんだろうな。

真面目な人だし・・・。

あーあ・・・。






これは、貫田雄大と日辻椿の、恋愛の物語である。










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