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彼女の夢現





そのまま放って置かれてたら、確実に寝てたと思う。

揺すってくれたら起きただろうに、運んでくれちゃったりなんかするから!




あたしの身長は160㎝台後半。

ずっとスポーツしてて筋肉質だし、女の中では重い方だと思う。

キャラでもないし、抱えられたことなんてない。

慣れないヒールで歩けなくなって負ぶってもらう、なんてイベント起こるわけないし!

(浴衣に下駄でも可)


それなのに・・・。


お姫様だっこって!!

恥ずかしすぎて死ねる。

何が恥ずかしいかってお姫様だっこそのものもだけど、それをちょっと嬉しいと思った自分自身がだよ!


2回も使っといて今更なんだけど、ここって貫田さんのベッドなんだよね・・・。

何かいいにおいする。柔軟剤かなぁ。貫田さんもいいにおいするよね。

あ、ヘンタイくさいな、あたし。


毛布に包まって悶々。

そろそろ起きなきゃ。


携帯で時間を確認してのそりと這い出る。

朝ごはん、作ろう。時間的に昼ごはんになりかけてるけど。

今回はばっちり材料買って来たしね。



キッチンへ行くと、すでに貫田さんの姿があった。


「おはようございます」


「おはよ・・・顔赤いよ。部屋寒かった?」


「いえ、寝起きだからですよ」


いちいち指摘すんな、恥ずかしいだけですよ!


「それなら良いけど・・・あ、米だけセットしといた。他は?」


「あ、あたしやりますから珈琲でも飲んでてください」


「いいよ、手伝う」


「・・・はい」


よくよく考えると何がどこにあるかあんまりわからないし、いてもらった方が助かるのだ。

ただ、恥ずかしいだけで。



貫田さん、手際良いなぁ。

昨日のキムチ鍋のときも思ったけど、自炊慣れてる人だ。

まぁ一人暮らしが長いんだし当たり前なのかな。

彼女も料理上手だもんね、一緒に作ったりするのかな。羨ましい。

あたしも一緒に作りたい。

というより食べたい。由宇衣さんの手料理かぁ・・・。


頭の中は妄想パラダイス、でも手元はしっかり朝ごはん。

しじみのお味噌汁にごぼうのサラダ、焼き鮭に大根おろし、卵焼き。

前回とまぁ似てるけど、定番だよね。





あっという間に食べ終わり、食後の一服。

煙草ではない、お茶である。念のため。


「椿今日どうする?」


「あ、あー、そうだった、忘れてた!」


若に言われて気付いた。

今日の夜、殿から呼び出されているのである。

まぁ要するに3人で飲んで駄弁るぞ、ってことなんだけど。

同じ営業部だけど課が違うし、外回りだからあまり顔を合わせない。

寂しがり屋wだから、堪え切れなくなったら呼び出してくるのだ。


「時間になるまでネットしてるから迎えに来て」


「了解」


「何かあるの?」


「1課の志村さんからの呼び出しで」


殿という渾名は苗字からだ。


「もしかして志村さんも・・・?」


「あーそうですね。あの人は特にエロゲと2CHとニ○動が好きみたいで。KE○と型月語ると長いです」


別に隠しているわけでもないし、お仲間なら特にかまわないって人だ。ぺろっと言っちゃう。


「すっげー意外!」


「あの人見た目軽そうですもんねー」


若が答える。確かに殿はチャラいというかなんというか。

それでも社会人として最低限の身嗜みは整えている。

営業成績も良い。


「っていうか刑部は何が好きなの?」


「俺はなろうとか虹とか小説サイト全般ですけど・・・あとニ○動とラノベ」


あたしは二次創作は見ないけど、若は割と好きらしい。

ゼロ魔ですごい面白いのがあるってアドレス送られて来たけど、見るの忘れてた。

若がそれ読んでおっぱいとちっぱいについて力説してた。イミフだった。

っていうか確実に女扱いされてない、あたし。別にいいけど。


「結構皆ニ○動見てんだなー」


「あれですよ、最近オタクじゃなくてもニ○動見ますって。見てるものが違うんでしょうけど」


そうなんだよね。

ニ○動はオタクしかみないって思ってたけど、結構皆見てる。

ゆりなちゃんも山下さんも見てるって言ってたし。


「あ、そうだ。今日暇なら貫田さんも行きません?」


「へ?」


「そんで志村さんのエロゲ話の被害者になれば良い」


「賛成です、貫田さん、行きましょう」


若に賛成。貫田さんを生贄にしてしまおう。


「行って良いの?」


「大丈夫ですよ、殿人見知りしないし」


っていうか営業職が人見知りだったら結構厳しいよね。


「たぶんエロゲ貸されるからそれを由宇衣さんに見つかってフラレれば良い。そうすれば晴れて由宇衣さんはあたしのもの!!」


「ねぇよ」


なんでだ!







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