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歪愛  作者: 藤岡
墨河 赤夜
31/35

06

「本当に早かったね!」

「おー。」

「あれ、赤夜くんここに血が……。」

愛久は赤夜のシャツを指差すが赤夜は黙って洗面所へと向かった。

「わ、えらい!」

「当たり前やろ。」

手を洗いながら返す赤夜に愛久は笑う。

「赤夜くんもう寝るの?」

「風呂入ったら寝るわ。なんで?」

「ご飯はいらない?」

「飯?なんかあんの?」

「簡単なものなんだけど。」

リビングへと移動した赤夜が椅子に座ると愛久はいそいそと冷蔵庫から食器を運ぶ。

「うわ、なにこれ。」

「肉じゃが作ったの。赤夜くん何が好きか分からないし王道かな?と思って。」

「へえ、美味そう。食うわ。」

「本当?食べてくれる?」

「おお。毒とか入れてへんやろな?」

「いれるわけないじゃん!」

はははと笑う赤夜を見て愛久は愛しく感じていた。

肉じゃがが入った皿を一度キッチンへ運びレンジの中に入れる。

その間に味噌汁を温め直し、だし巻き玉子を作った。

カウンター越しに覗く赤夜は鼻をヒクヒクとさせ、「腹減った。」と愛久を急かす。

すぐに出来るから待ってて!と言われた赤夜は黙ったまま椅子へ戻り携帯電話を取り出しなにか文字をうっているようだった。

「ねぇ、赤夜くん。」

温めた味噌汁と肉じゃが、そして白米とだし巻き玉子を運ぶ愛久。

「ん?」

「この家具とか色々、赤夜くんが買ったの?」

「なんで?」

「いやー、良い製品ばっかりだなぁと思って。」

「へぇ、ええ製品なんや。」

赤夜の顔には、そんな事どうでもいい。と書いてある。

愛久はやはり前に付き合ってた人とかが買ったんだろうなと少し落ち込む。

頂きます。と手を合わせ肉じゃがを口に運んだ赤夜は、美味ぇ!と嬉しそうな顔を見せた。

その顔を見た愛久は全てがどうでも良くなり、赤夜が喜んでくれた、赤夜が美味しいと言ってくれたという事実にうちひしがれる。

「貰い物。」

「え?」

もぐもぐと食べるついでに話す赤夜。

「だから、人からもらった。家具とか。」

「そうなの?」

「そう。」

「ふぅん、そうなんだ。」

ニヤニヤとする愛久をジトっと見る赤夜。

「……なんやねん?」

「んーん、何も無い!美味しい?」

「うん、美味い。」

愛久は自分が気にしていると察してちゃんと答えてくれたのだと嬉しくなった。

そのまま答えずモヤモヤとさせておくのは嫌だという考えなのだろう。

きっと赤夜は今までの人と違って、性格も合うのだろうと。

──────────────

あれから半年経った。

愛久の家の家賃は俺が払うと言われた時、勿体無いからいいよ!と断ると、じゃあここに住めば?と言われそのまま赤夜の家に住むことになった。

好きだとか付き合おうだとかは言われていない。

愛を感じるか?と聞かれれば、ちょっとした事に対しても感じてしまうタイプなのでそれには自信を持って頷ける。

身体の関係も無理矢理では無く、思っていたより数も多い方では無い。

それに、今までは生理だと伝えればそれでも無理矢理求められたり、何故か怒られたりしたが、赤夜は遠回しではあるが体調を気にしてくれる。

仕事に行く前は必ずいい子にして待ってて。と伝えてくれ、帰る前には、帰る。という短い文が送られてくる。

何を食べたい?と聞けば、その時食べたいものを素直に伝えてくれるし、聞く前からアレが食べたいと伝えてくれるので献立を考えるという悩みは今の所無い。

家事を手伝ってくれるか?と聞かれれば、洗濯物を取り込む位はしてくれるが他はあまり。

だがこれに関しては愛久が何もしなくていいと伝えているからなのかもしれない。

日によっては暴れてきたんだろうなと思えるような姿で帰ってきたり、物凄く機嫌が良く帰ってきたりと感情が丸出しな所が分かりやすくて助かる。

愛久が好きだと伝えると、最初はうるさい。と流されていたが最近では、知ってるよ。と頭を撫でてくれる。

赤夜は部下が見れば卒倒するのでは?と思うほど甘えてくる時がある。

とても疲れている時や嫌なことがあった時に甘える傾向がある。

甘えてくる時は決まって、愛久ちゃん。とちゃん付けで呼ぶのでこれも分かりやすい。

本人に自覚は無いようなので黙って見ているが、愛久ちゃん、愛久ちゃんと甘えるその姿は独り占めしたいと思うほどに愛おしい。


それなりに上手くいっている。

そう思われている二人ではあったが、ここ最近愛久の様子が少しおかしい。

それに赤夜が気付いていない訳がない。だからといって詰め寄ることもない。

今は泳がせている状態である。

赤夜が愛久の異変に気付いたのは、いつもより早く目が覚めリビングのドアを開けようとした時。

「うん、会えるのが楽しみだね。」と誰かと話している愛久。

誰かと電話か?とドアを開け声を掛けずに冷蔵庫を開くと愛久は体をビクリと跳ねさせ慌てて電話を切ったのだ。

「友達?」

「う、うん。そう。起きるの早いね?」

「喉乾いた。」

この時赤夜は愛久が浮気をしていると察していた。

あれだけ好きだと言ってきていた割にはやはり他の男に股を開くんだな。と呆れると同時に、心底腹が立った。

愛久に対する怒りと相手に対する殺意が膨れ上がる。

だが赤夜は平常心を装い気付いていないフリをした。

どうして愛久が余所見をしたのか、心当たりがあったからだ。

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