07
「おかえりなさい!」
赤夜と話しているとあっという間に家に着いた。
他の監視役の目が気になる陽橙に対し赤夜は「ウチのやつ見張りにつけとくから安心せぇ。」と言い残し颯爽と街の中へと消えて行った。
「ただいま。」
朝早いにもかかわらず元気よく出迎えてくれる紅葉が愛おしくて堪らない。
陽橙は玄関を閉めると紅葉を抱き締め強く求めた。
「ひ、陽橙くん。待って。」
「待てない。」
「どうしたの?何かあったの?」
陽橙は答えず紅葉を抱き抱えるとそのまま寝室へと向かった。
あわあわとする紅葉を優しくベッドの上に寝かせると上の服を脱ぎ覆い被さる。
「陽橙くん、何かあったでしょ。」
「……何も無いよ。紅葉が可愛くて仕方ないだけ。」
紅葉の首元に顔を埋め優しくキスをすると紅葉は身体を震わせる。
「陽橙くん……大丈夫だよ。私がいるからね。」
そっと包み込むようにして抱きしめる紅葉。
陽橙は顔を上げ紅葉をじっと見つめた。
紅葉の頬に雫が滴りそこでやっと陽橙は自分が泣いていることに気付いた。
「僕……ごめん。急にごめんね。」
陽橙がゆっくりと紅葉の隣に寝転ぶと、紅葉は「大丈夫だよ。大丈夫。」と声を掛けながら頭を撫でる。
ああ、このまま一生この時間が続けばいいのに。
このまま二人でずっと、ずっと。
少し時間が経ち落ち着きを取り戻した陽橙は服を着ると紅葉に頭を下げる。
「本当にごめん。」
「謝らなくていいよ。」
リビングへと移動し淹れたての珈琲を陽橙の前に出す紅葉。
「疲れたんだろうね。今日はゆっくりしてね。」
「……うん。」
陽橙は珈琲を口に含むと心がじんわりと温もる。
「ごめん、寝不足で。少しだけ寝るね。」
「うん、おやすみなさい。」
フラフラと立ち上がり寝室へと向かう陽橙。
そんな陽橙を心配そうに見つめる紅葉は胸騒ぎがしていた。
寝室に戻りベッドに寝転んだ陽橙は目を閉じ先程の光景を思い出す。
自分の下で自分を見つめる紅葉。
細い腕は掴めば振りほどかれることは無いだろう。
抵抗すれば一発軽く頬を叩けば大人しくなるだろう。
そんなことを考えてしまった。
嫌だと叫ぶ姿と、痛みと苦痛に歪む表情を想像して興奮してしまった。
最低だ僕は。なんでこんな時にそんなことを。
今までそんな想像をしたことなんて無かっただろう。
だけど、抑えきれない。
でもそんな姿を見る事は出来ない。いや、したくない。
僕はあの村の人達と同じじゃない。
陽橙は抑えきれない欲を発散する為に手を伸ばし動かす。
「紅葉、紅葉、紅葉。」
普段の紅葉との行為を思い出し息を荒くする。
だが目を閉じると生贄となった紅葉が映し出される。
恐怖で涙を流す紅葉の中に侵入し、痛い嫌だと叫ぶ紅葉の頬を叩き無理矢理に腰を振る男は自分だ。
そんな最低な想像をしていると手の動きが速くなる。
ぬるぬるとした液体が手を滑らせ陽橙を導く。
「んっ……。はぁ、はぁ……も…みじ、もみじ。」
勢いよく出されたそれは陽橙の手にまとわりつく。
息を切らし天井を見上げる陽橙はまた最低な想像で達してしまったと後悔をする。
──────────────
陽橙が目を覚ますと外は暗くなっていた。
自分の右手を見るとなんとも言い表せない臭いを放ち清潔では無いと言い切れる見た目をしている。
「うわ、最悪。」
陽橙は重い体を起こすと着替えを出し風呂場へと向かった。
服を脱ぎ浴室に入ると勢いよく頭からシャワーを浴びる。
汚れが落ちていく感覚がしてすっきりとする。
体を丁寧に洗い、ついでに下着も洗っておいた。
「臭い残ってないかな?」
何度か嗅ぎ確認をし、風呂から出ると用意していなかったバスタオルが置かれていた。
「怖いくらい気が利くな。」
紅葉に感謝しバスタオルで頭を体を拭き用意していた着替えに腕を通す。
明かりが灯るリビングへ行くと良い匂いが鼻を刺激する。
「おはよう陽橙くん。今日はハンバーグだよ。」
そう言って紅葉がテーブルの上に食器を並べていくので陽橙も手伝い、二人で共に席につき手を合わせた。
「美味しい。」
陽橙がニコニコ笑顔で頬張り、紅葉はそれを幸せそうに見つめていた。
食事と後片付けを済ませた二人がソファで寛いでいると陽橙の携帯電話が鳴り響いた。
陽橙が嫌そうな顔をしながら画面を見ると赤夜からの電話だった。
「ちょっとごめんね。仕事の人からだ。」
「大変だね。」
陽橙は自室へ行き扉を閉め通話開始ボタンを押し耳に当てると赤夜のご機嫌な声が聞こえた。
「もしもし。こっちの準備は整ったけどどない?」
「え、もう?」
「そりゃ早い方がええしな。」
「……本当に出来るのか?」
「あ?俺を誰やと思ってんねん。」
「独裁者。」
「独裁者ぁ?ははは、なんやお前そんな冗談言えるくらいには回復したんか。
女の力ってのは凄まじいな。」
「冗談……はは、冗談ね。」
「なんやねん?」
「いや、別に。……実行するとしたら今日なのか?」
「いつでもええで。いつがいい?今日でも明日でも陽橙がGOサインくれたらすぐ突撃や。」
「僕次第なのか?それはそれでなんだか責任重大だな。」
「まぁこれはお前の事やからな。いつにすんねん?」
「じゃあ────」
陽橙は赤夜との通話を終えるとすぐにリビングへと戻り紅葉に抱きつく。
「今日は甘えん坊さんだね?」
「……うん。」
弱々しい声をする陽橙の頭を撫でる紅葉。
「紅葉。」
「なあに?」
「抱いていい?」
「すごく直球だね。」
紅葉はケタケタと笑っていたが、顔を上げ目が合った陽橙を見て徐々に笑みが薄れる。
「紅葉が欲しい。」
「陽橙くん……。」
二人は何度か唇を重ねると何も言わず寝室へと向かう。
「紅葉、ごめん我慢できないかも。」
「いいよ、陽橙くんになら何をされても。」
暗い部屋で服を脱ぎ覆い被さる陽橙は、紅葉の細い腕を掴む。
「いっ……」
いつもなら、痛かった?ごめん。とすぐに手を離すのだが今日は何も言わず掴んだまま離さない。
紅葉はいつもと少し違う陽橙にほんの僅かに恐怖心を抱いた。




