04
皮膚が切れ、血飛沫が跳ね、肉が削がれ、髪が抜け落ち、骨が折れ、爪が剥がれる。
それを見て笑う村人。
「そろそろ発情期の猿共がきっしょい事始めそうやな。」
陽橙の耳元で小声で話す男の声はどこか楽しげであった。
発情期の猿とは男の村人のことである。
生贄が女性である場合は性欲の発散道具として使うのだ。
口枷が外されると雑に歯を抜かれそのまま異様な臭いを漂わせるモノを突っ込まれる。
頭を掴み無理矢理奥へと押し込み好き勝手に動く村人は一人では無い。
一人が始めると自分も、自分もと光に集る虫のように集まってくるのだ。
足を舐める者もいれば、生贄の手を取り無理矢理自分のモノを触らせる者もいる。
鼻息を荒くしくまなく生贄を舐める者や、噛みつきそのまま噛みちぎる者までいるのだ。
衝撃に耐えきれず叫ぶとそれを見てまた笑い出す村人。
嘔吐する生贄の足を掴むと順番に生贄と交わっていくその光景はまるで地獄である。
普通の人間ならば、神への捧げ者にそんな事をすればバチが当たるのでは?と思うだろう。
だがこの村に住まう人間達は普通では無いのである。
ただし、自分達の唾液や体液で汚れたまま捧げるのはいけない事だとし、行為が終わると生贄は季節を問わず頭から冷水をかけられ力強く布で全身を擦られるのだ。
体内に出された体液は掻き出し棒で雑に取り除かれ、ホースを突っ込み冷水で洗われる。
女性の生贄の方が息絶えるのが早いとされる理由はこれである。
「あーあ、嘔吐物塗れで汚いなぁ。
あっこまで行ったら臭くて鼻取れてまうかもしれんな。」
「…………。」
「なんや?興奮してんのか?」
「するわけないだろ。」
「嘘こけ。小さい時からあんな光景ばっか見とったら嫌でも性癖歪むわ。
あの女が紅葉で今口に突っ込んでるあの男が自分やったらって想像したらはよ帰りたくなるんちゃう?」
「冗談は良してくれよ。そんな想像したくもない。」
「へぇ?身体は反応しとるけどな。」
陽橙の下半身を見た男がニヤニヤと笑うと陽橙は手でそれを隠した。
「……なぁ、陽橙。」
男は陽橙の耳に唇を当て囁く。
「アレを一人でやりたいから連れてこんと匿ったんやろ?」
「馬鹿なことを言うな!!」
男から離れ叫ぶとしんと静まり返る。
我に返った陽橙が村人の方へ視線をやると、その場にいる村人全員の視線が陽橙へと集まっていた。
「あ……す、すみません。」
陽橙が謝ると村人達は何事も無かったかのように再開し、周りで見ていた村人達もその行為を見守った。
「急にでっかい声出したらあかんやろ。くくっ、萎えてるやん。ごめんな。」
「……紅葉の事はここで話さないでくれ。」
「へいへい。坊っちゃんの仰せのままに。」
男は小馬鹿にしたように頭を下げると、ヘラヘラとした顔を上げる。
「女ももうほとんど上手いこと息出来てへんしもう終わりや。」
陽橙がほっとした顔をすると男は「今日はあの女合わせて三人や。」と伝える。
それを聞いた陽橙の顔は青ざめた。
「大丈夫、残り二人は男やから猿の行為は省かれる。
と言いたいとこやけど、最近猿も進化してるやろ?一回男でも試したいって話やねん。」
「試したいって……」
「性行為に決まってるやん。
俺は勘弁やけど、世の中には同性同士でそういう事するやつらもおるやん。
それに目覚めた村人がおるってこと。
ただこの小さい村で同性愛者が増えたら子孫繁栄出来ひんやろ?
絶対異性と結婚してガキを作らなあかんって話やん。
でも同性に興味あるってやつらは、異性と結婚してガキも作るけどその抑えきれん欲は生贄で発散しよかっていうほんま性道具としてしか見てない結論に至ったってわけ。
ほんでそれを今日初めて実行するんやと。」
「じゃあ男性も同じように……。」
「そう。
ギリギリまで痛めつけられたあとは外から内から犯されて絶望の中で死ぬ。
ちょっと自殺しようと思っただけでどえらい目に遭うんやから簡単に自殺しようなんて思ったらあかんなぁ?
……まぁ俺も見逃したやつおるし、俺らみたいなんに見つからんかったらこんな思いせんと死ねるんやけどな。」
「見逃すことなんてあるんだな。
見つけ次第捕まえて連れてきそうなのに。」
陽橙は男の口から見逃したという言葉を聞いて驚いた。
気分が乗らずに見逃したのか?とも思ったが、どこか悲しげな目をしているのに気付き違和感を覚えたのだ。
「俺をなんやと思ってんねん。
そりゃ多少関係あったらこんな目に遭うって分かってて連れてきたいとは思わんやろ。
それは陽橙がよーく分かってるんちゃうんか?」
「……ああ。
そうか、その相手に恋をしたから見逃したのか。恋とかするんだな。」
「あ?あほか。相手は男や。
それに別に直接会ったわけでもなけりゃそいつ自身のことはなんでもええ。
そいつのツレが俺の幼なじみやったから見逃したっただけや。」
男は手の指をパキパキと鳴らすと大きな欠伸をした。
「ほんなら俺はこの辺で。」
「え?帰るのか?」
「おう。もう運び終えたしここに長居してたらしんどなるし、まだやる事残ってるし。
陽橙はこの後も見守って明日になったら火葬手伝って掃除やろ?
明後日帰るんやっけ?迎えにきたろか?」
「いや、いい。
駅まで送ってもらって電車で帰るよ。」
「ああそう?えらい時間かかるんちゃうんか?
まあ陽橙がそう言うならええけど。
ほな俺は一足お先に失礼します。またな。」
男は陽橙の肩をポンと叩くと背を向け階段を下っていく。
一人残った陽橙は生贄の方へ視線を戻し、生贄の最期を見届けた。
男が言った通り女性の生贄が箱に入れられるとすぐに男性の生贄が一人運ばれてきた。
村人達はムチや棒を手に取ると生贄を痛めつけ、そしてやはり男の言う通り初めて口枷が外された。
転がる歯が増え無理矢理に突っ込まれた生贄は噛みちぎろうと口に力を込めるが、そんな力は残っていなかった。
少しの痛みを感じ生贄が何をしようとしたのか察した村人は、生贄をうつ伏せに寝かせるとそのまま体内へと侵入した。
生贄が声を上げると村人は息を荒くし激しく腰を振った。
一人が果てるとすぐにもう一人が生贄の中へと入り込み自分の欲を思うがままにぶつけた。
二人目が果てると仰向けにされた生贄は局部に温もりを感じる。
ぬるぬるとした温かいものがまとわりつき、生贄は口を開け脳がとろける感覚に陥り、天国に来たのか?と錯覚するほどであった。
が、それはすぐに地獄へと戻されることとなる。
舐め回され、吸われ、十分にいきり立ったモノは想像を絶する痛みを伴い、それはコロコロと地面へと転がり落ちた。
生贄の叫び声は村中に響いたのではないか?と思われるほどに大きく、野鳥がその場を離れていった。
口を赤くした女村人はプッと唾を吐き、周りで見ていた男村人は笑いながら生贄の体を起こした。
先の方が取れたモノを見て生贄は再び叫ぶが、口枷をはめられてしまう。
その光景を見ていた陽橙の顔から感情は読み取れず、ただひたすらに黙ってその行為を見るしか無かった。
生贄が箱に入れられると最後の一人が運ばれてきたが、村人達は体力が尽きたと言い出す。
この状態だと万全な状態で捧げる事が出来ないから明日にしてほしいという頼みを受けた生贄の運び人は陽橙を視界に捉えるとゆっくりと近付き、頭を下げた。
「村人の意見は聞こえていましたか?」
「はい。」
「では、坊っちゃんがご判断ください。」
「……え?父さんに聞いた方がいいだろ。」
「陽橙坊っちゃんに任せるとのことです。」
「あー……。」
だから何もしなくてもいいけど最初から最後までこの場にいるように言われているのか、と理解した。
「じゃあ明日で。
見てただけだけど僕も疲れちゃったし。」
「承知しました。」
生贄の運び人は村人達に残りの一人は明日捧げる事を伝え、運ばれ怯える生贄の首に繋がるロープを強く引っ張り元来た道を戻る。
「終わった終わった。」
「男もいいな。」
「傑作だったな。」
陽橙の横を通り過ぎていく村人の会話が耳に届く度に反吐が出る。
「会いたい。早く。会いたい。紅葉。」
ストレスが溜まった陽橙は携帯電話を取り出し紅葉の写真を見ながら目に涙を浮かべた。




