第44話 脇役、黒鎧オークロード戦でも中心に
勇者パーティの戦いはまさに“主役”だった。
光と炎が交錯し、矢と剣が舞い、オークの咆哮が村中に響く。
だが――。
「数が減らない……!?」
アリシアが蒼ざめた。
次から次へと、黒い瘴気を纏ったオークが森の奥から湧き出てくる。
普通のモンスターとは明らかに違う。腐敗したような肉体、赤く濁った眼光。
「これは……ただの群れじゃない!」
フェリスが険しい声で叫ぶ。
「何者かが意図的に操っている!」
「ってことは黒幕系!? 俺、そういうの大嫌いなんですけど!」
俺は必死に下がるが、なぜか進む先にもオークが出てくる。
「悠真、危ない!」
シャロの矢が俺の真横をかすめ、飛びかかってきたオークを射抜いた。
「……また中心にいるなんて、どういう体質なの」
「いやいや俺も聞きたいんだけど!?」
戦況はさらに激化した。
「喰らええぇぇっ!」
カイルの大剣が光を増し、オーク十数体をまとめて吹き飛ばす。
地面に巨大な裂け目が走り、衝撃で俺は思わず耳を塞いだ。
リンはその裂け目を飛び越え、笑顔で敵陣に突っ込む。
「まだまだーっ!」
剣が弾丸のように閃き、黒い血が飛び散る。
アリシアの魔法は空を覆うほど巨大な炎の翼を生み出し、村の入り口を火の壁で防ぐ。
「これ以上、村に入れさせはしない!」
セリーナの祈りの声が重なり、仲間たちの傷が次々と癒えていく。
「皆さん……負けないでください……っ!」
柔らかな光が差し込み、戦場に一瞬の清涼感が広がった。
そして――フェリスの冷静な判断が戦況を支える。
「カイル、左翼を崩せ! リン、突破口を広げろ! シャロは悠真を死守だ!」
「え、ちょっと待て!? なぜ俺が守る対象に!?」
「一番狙われやすいからよ!」シャロが即答する。
「俺ただのモブなんですけど!?」
そのときだった。
オークの群れの奥から、異質な気配が迫ってきた。
ズシン……ズシン……。
地面が震え、木々がなぎ倒されていく。
「……でかい」
カイルが大剣を構え直す。
現れたのは、身の丈五メートルを超える巨躯。
全身を瘴気に包まれた“黒鎧のオークロード”だった。
「な、なにあれ……反則じゃない!?」
俺の悲鳴に、リンがにやりと笑う。
「いいじゃん! 燃える展開だね!」
「いや俺は燃え尽きたくないんだけど!?」
オークロードが吠えた。
その咆哮だけで村の屋根が揺れ、子どもたちが泣き叫ぶ。
「来るぞ!」
カイルが全員に合図を送り、大剣を振りかざした。
光と闇が激突する――勇者パーティの総力戦が、いま始まろうとしていた。




