第43話 村を襲う異変、脇役はまた現場に
朝のブレイヴ村。
昨日の事件で救われた子どもが走り回っている一方で、村全体に奇妙な緊張が漂っていた。
「なんだか……空気が重いね」
聖女セリーナが胸元に手を当て、不安そうに空を仰ぐ。
俺――悠真は、畑の脇に座り込みながら大きく伸びをした。
(いやいや、こんな雰囲気出されても困るんだが……俺はもう事件ゴメンだぞ)
しかし、村人たちの声は次第にざわめきを増していく。
「畑が……枯れてる!」
「今朝から家畜が逃げ出したんだ!」
ざわつく群衆のど真ん中で、俺はポツンと所在なさげに立っていた。
――そして例によって。
「……あれ? また悠真がいる」
弓使いのシャロが、真剣な目で俺を指差した。
「……また“事件発生直後に”現場に居合わせてるな」
フェリスの視線が冷たい。
「ま、また!? 俺ほんとに偶然だから!」
必死に否定する俺。だが勇者パーティ全員が「うーん……」と眉を寄せる。
(……なんで俺、また疑われてんの!?)
調査のため、勇者カイルを先頭に村外れの森へ向かうことになった。
俺? もちろん巻き込まれた形で同行している。
「悠真、君は外で待機していろ」
カイルがそう言ってくれた瞬間、内心ガッツポーズ。
(よし! 俺は安全圏! まさに傍観者!)
――その瞬間。
森の奥から、異様な咆哮が響いた。
地面が震え、黒い瘴気が村の方へ流れ込んでくる。
「来るぞ!」
カイルが大剣を抜き放つ。
次の瞬間、木々を薙ぎ倒して現れたのは、漆黒に染まった巨大オークの群れだった。
「な、なんでこんな数……!?」
リンが目を剥く。
「悠真! 絶対に離れるな!」
アリシアが叫ぶ。
「いや俺は離れたいんですけど!?」
勇者パーティはすぐさま戦闘態勢へ。
「セリーナ!」
「はい、結界を展開します!」
光のバリアが展開し、村人たちを守る。
その前にカイルが躍り出て、光を宿した大剣を振り下ろした。
「斬ッ!」
閃光の軌跡が走り、前衛のオーク三体が一瞬で吹き飛ぶ。
爆風と共に地面が抉れ、俺は思わず尻もちをついた。
「ちょ、派手すぎんだろ!」
「アリシア、援護!」
「了解!」
銀髪の魔術師が詠唱し、炎の奔流を呼び出す。
火柱がオークの群れを包み込み、空気が焦げる匂いに変わる。
リンがその隙を縫って飛び込み、剣を閃かせた。
「そぉれぇぇっ!」
連撃、回転、跳躍。明るい掛け声と共に、オークたちを次々となぎ倒す。
後方ではフェリスが冷静に詠唱。
「速度強化――全員、足を止めるな!」
仲間の動きが一気に速くなり、戦況が加速する。
その流れに合わせて、シャロの矢が次々と敵の急所を射抜いた。
「外さないわよ……っ!」
雨のような矢が空を覆い、数十体のオークが一斉に崩れ落ちる。
俺? もちろん――戦場のど真ん中で立ち尽くしている。
「……なぜ俺が一番危険な場所に!?」




