第42話 事件を呼ぶ男、ただの通行人のはずが
次の村に到着した俺たちは、ほっと息をついた。
「人が多い……にぎやかだな」
市場では子どもたちが走り回り、行商人が声を張り上げる。
俺は内心ほっとしていた。
(よし……ここでは事件なんて起こらないだろう。静かに過ごして、パーティのみんなに“ただの通行人”って証明できれば……)
だが、そんな期待は十秒で打ち砕かれた。
「火事だ――っ!」
突如、広場の奥から上がった叫び。
見ると、木造の倉庫から煙がもくもくと立ち上り、村人たちが慌てて逃げ出している。
「……またかよっ!」
思わず俺は走り出していた。
気づけば村人の子どもが入口付近で泣きじゃくっている。
「お母さんが、中にっ……!」
「――!」
足が勝手に動く。
俺は反射的に煙の中へ飛び込んだ。
視界は白く、息は苦しい。
でも運よく母親を見つけ、腕を引いて出口に駆け戻る。
「こっちだ!」
外に飛び出した瞬間、母子が抱き合うのを見て、俺はようやく息を吐いた。
(……ほんと、なんで俺いつも現場にいるんだよ)
「悠真さん!」
追いついてきた勇者パーティ。カイルが剣を構えながら叫ぶ。
「やはりお前は事件に関わっている……が、今の行動は確かに勇敢だった!」
「いやいや! ただ偶然近くにいただけだから!」
そこに聖女セリーナが駆け寄る。
「偶然でも……人を救う勇気があるのは素晴らしいことです」
真っ直ぐな瞳に見つめられて、俺は思わず視線を逸らす。
さらにリンが飛びついてきた。
「やっぱりお兄さんってヒーローじゃん! かっこよかった!」
「ちょ、離れろ! 誤解が広がるだろ!」
そんなやり取りの横で、シャロがぼそりと呟く。
「……やっぱり、事件の中心には悠真さんがいる」
「だから偶然だって!」
「でも――どうしてかしら。悪い気はしないの」
「!?」
無表情のままなのに、不思議と胸に刺さるその言葉。
そして最後にフェリスが腕を組んで言った。
「……ふむ。悠真、あなたが事件を引き寄せているのか、それとも必ず解決に関わるのか。どちらにせよ、目が離せませんね」
俺は両手を上げ、必死に否定した。
「……いやだから、俺はただの旅人なんだってば!」
だがその言葉は、勇者パーティには届かない。
彼らの中で、俺はもう「事件を呼ぶが人を救う謎の男」として認識されつつあった。
そして――。
またもや「監視付きの旅路」は続くのであった。




