第38話 一人旅のはずが監視付き
翌朝。
小鳥のさえずりが心地よい……はずだった。
「おはよう、怪しい人」
「……いや、いきなりその呼び方はやめてもらえます?」
目を覚ますと、目の前にフェリス(賢者)が座っていた。
涼しい顔で本を読みながら、俺を見下ろしている。
「朝になっても逃げなかったんですね。意外です」
「いや、逃げたらもっと怪しいでしょ!?」
「どっちにしても怪しいのでは?」
「やめてぇぇぇ!」
昨日、ローベル村でゴブリン退治に出くわしてしまった俺は、なぜか勇者パーティと一緒に野営することになった。
本当は寄り道の一人旅を満喫するはずだったのに……。
「おーい悠真! 焼きたてのパン食べるか?」
元気いっぱいの声とともに現れたのは、勇者カイル。
……そう、女勇者である。
寝起きの俺にパンを差し出す笑顔はまぶしい。
「……いやいや、なんで俺まで朝食配給受けてんの? 俺ただの通行人なんだけど」
「通行人は昨夜、私たちの野営地で一晩過ごした。もう仲間みたいなものだろ?」
「うわ、勇者補正で強引に仲間扱いされた!?」
パンをかじりながら途方に暮れる俺。
どう考えても脇役の気楽な旅路が遠のいていく。
◇
「さあ、次の村へ向かうぞ!」
「おー!」
村人たちから感謝を受け、さっそうと出発する勇者パーティ。
……そして、なぜかその後ろを歩く俺。
「ちょっと待って! 俺は王都とは反対方向に行きたいんだけど!?」
「監視対象に選択権はない」
フェリスの冷静な一言。
「選択権ゼロォォ!?」
セリーナ(聖女)が困ったように微笑む。
「でも、悠真さんが嫌なら無理に一緒に来なくても……」
「いやいや、放っておけないだろ」
カイルが真面目顔で反論する。
リン(剣士)がにやにや笑いながら言う。
「ていうか怪しいんだよねー。事件現場に必ずいるんだもん」
「そうそう。昨日のゴブリン騒ぎでも一番最初に畑の端にいた」
シャロ(弓使い)まで疑いの視線を向けてくる。
「まるで事件が起きるのを知ってたみたい」
「いや、タイミング悪いだけだってば!!」
全員から疑惑の目で見られ、俺の心はズタボロだ。
……護送されてる囚人って、たぶんこんな気分。




