第36話 傍観者、容疑者ポジションに立つ
――というわけで、俺は勇者パーティ6人から一斉に注目を浴びていた。
周囲の村人たちまで「誰だろう、この人?」みたいな目で見てくる。
(やばい……これ、完全に容疑者ポジションじゃん! 俺はただの傍観者だっての!)
「おい、君。名前は?」
勇者カイルが一歩前に出る。背筋の伸びた立ち姿、青い瞳。正直かっこいい……いや、可愛い。
でも今はそれどころじゃない。
「ゆ、悠真! ただの通りすがりの旅人です!」
俺がそう叫ぶと、魔術師アリシアがすぐさま眉をひそめた。
「通りすがりにしては妙ね。戦闘中も落ち着きすぎていた。普通の人なら悲鳴を上げて逃げるはずよ」
「えっ、それ褒めてる? 貶してる?」
「どっちもよ」
即答。怖い。
「しかも昨日の山道でも見た気がするんだよなぁ」
弓使いシャロが矢をクルクル回しながらぼそっと呟く。
「俺!? いや、それ人違いでしょ!?」
「でも……昨日の山道で魔物を追い払った直後に、木陰で座ってる男がいたのを確かに見たんだよね」
シャロが真顔で続ける。
「うわぁ、確定っぽい言い方やめろぉ!」
聖女セリーナまで心配そうに口を開く。
「……でも、本当に偶然かもしれません。きっと悠真さんは悪い人じゃ……」
「セリーナ、甘い」
リンが剣を肩に担ぎながら割り込む。
「敵じゃなかったとしても、怪しい奴を放っておくのはよくないよ」
「…………」
賢者フェリスは腕を組み、冷静に分析する。
「事件ごとに必ず現場にいる人間……。偶然にしては出来すぎている。統計的にありえない」
「ちょ、統計!? 俺の人生を数字で断罪しないで!」
勇者カイルは腕を組んで俺をじっと見た。
「ふむ……事件を仕組んでいるのか、巻き込まれているだけなのか。どちらにしても放置はできないな」
「ま、待って! ほんとに俺、何もしてないから!」
必死に弁解する俺を、パーティ6人がぐるりと取り囲む。
村人たちも遠巻きにヒソヒソ声を上げていた。
「誰なんだろうね、あの人……」
「怪しいよなぁ……」
「勇者様たちと一緒に来たんじゃないの?」
(ちょっと待て! 俺はただ寄り道してただけだって!)
……が、俺の心の叫びは誰にも届かないのだった。




