第34話 一人旅の始まり 脇役の決意
朝日が差し込む野営地で、俺――神田悠真は荷物を背負い、深呼吸をした。
「よし……今日から俺は王都へ向かう!」
声に出すと、ちょっと冒険者っぽい雰囲気が出て悪くない。
だが、そこでふと首をかしげた。
「……って、そういえば『いつまでに王都に来い』とか、言われてないよな?」
思い返してみても、期限なんて誰も言ってなかった気がする。
つまり――。
「急ぐ必要ないじゃん」
うん、納得。
さらに俺は天を仰ぎ、真剣に考え込む。
「王都に行ったら、主人公補正で大変なことになるよな……。魔王だの、陰謀だの、強敵だの、絶対ついてくるんだよ」
想像するだけで胃が痛い。
勇者たちはノリノリで向かっていくが、俺はあくまで脇役だ。
主役の修羅場にわざわざ突っ込む必要なんてない。
「……よし。寄り道しながら、三年後くらいに王都に着けばいいか」
誰も困らない。俺も楽できる。完璧な計画だ。
俺は力強く頷くと、足を踏み出した。
――そして、王都とは反対方向に。
草原の風が気持ちいい。
遠ざかっていく王都を背に、俺は満足げに呟いた。
「これぞ脇役の生き方。寄り道こそ、人生の正解だな」
その頃、遥か彼方の王都では――「なぜか来ない謎の冒険者」として、すでに俺の名前が噂になり始めていた。
第1章 完




