第31話 迫る別れと、秘密の夜
王都からの使者が去って二日。
屋敷の空気は張りつめたままだった。
悠真は中庭のベンチに腰掛け、空を見上げていた。
澄んだ青空は美しいはずなのに、心は重い。
「(……俺は王都になんて行きたくない。だけど拒否すれば、村やみんなに迷惑が……)」
脇役として生きたい――その願いと、周囲の期待との板挟み。
胸の中に渦巻く葛藤は消えることなく、日に日に膨らんでいく。
「……悠真さん」
振り返れば、そこに立っていたのはリサ。
続けて、セレナ、ミリア、クリスティアも姿を現す。
四人はどこか決意を秘めた表情で、静かに彼を見つめていた。
「もうすぐ……出立なのね」(セレナ)
「王都に行ったら、しばらく会えないかもしれない……」(リサ)
「……どうせ、また危険に巻き込まれるんでしょ」(ミリア)
「ですから、最後に――思い出を残していただきたいのですわ」(クリスティア)
悠真は戸惑いながらも、その意味を察して目を見開く。
「ま、待て! まさか……」
その夜。
屋敷の一室に、悠真と四人の少女が集まっていた。
窓から差し込む月明かりが、柔らかな光で部屋を満たす。
どこか緊張した空気。
言葉よりも先に、彼女たちの視線が悠真に語りかけていた。
「悠真さん……最後に、わたしたちのこと……覚えていてほしいんです」(リサ)
「戦いに行くあなたに、力を与えたいの」(セレナ)
「……どうせ脇役気取りでごまかすつもりでしょ。でも、これはごまかせないわ」(ミリア)
「運命の人に、この想いを伝えずにはいられませんわ」(クリスティア)
四人の思いが重なり合い、悠真の胸を強く打った。
「(……俺なんかが……いいのか?)」
葛藤と困惑――だが、その夜、彼は逃げることをやめた。
月明かりの下で、それぞれの想いは確かに結ばれた。
ぎこちなくも、熱く。
涙や笑みや囁きが交差し、四人は一人の男との絆を刻み込んだ。
それは決して軽い気持ちではなく、別れを前にした真剣な想い。
そして悠真の中にも、脇役を超えて“誰かに必要とされる”温かさが芽生えていった。
夜が明けるころ。
静まり返った部屋で、四人が眠る横顔を眺めながら、悠真は小さく呟いた。
「……ありがとう。俺、絶対に戻ってくる」
そして彼は、眠る彼女たちにそっと言葉を残した。
「王都で……また会おう」
その誓いを胸に、悠真は新たな一歩を踏み出そうとしていた。




