第30話 王都からの影 謀略の使者
翌朝。
宴の余韻がまだ村に残る中、屋敷の門前に一台の馬車が止まった。
王都からの紋章を掲げたそれは、村人たちの視線を一気に集める。
馬車から降り立ったのは、黒衣に身を包んだ騎士数名と、一人の文官風の男だった。
「……王都からの使者だと?」(ガルド卿)
領主が眉をひそめる。
悠真は門の陰からその様子をこっそり眺めていた。
「(いやな予感しかしない……絶対俺に関係あるやつだろ……)」
男は冷たい眼差しで屋敷の広間に通されると、まず礼を述べ――そして告げた。
「――我らが陛下の御意により、“蒼紋剣の担い手”を王都へ召し抱える」
「やはりそう来たか……!」(ガルド卿)
領主は重々しくうなずき、周囲の空気も一気に緊張した。
リサ、セレナ、ミリア、クリスティアの四人が同時に悠真を振り返る。
「悠真さん……!」(リサ)
「王都って……そんな大それた……!」(セレナ)
「ふん、脇役を気取ってても、こうなる運命よ」(ミリア)
「運命の導きですわね!」(クリスティア)
「ちょっ……待て待て待て! 俺はただの脇役! 関係ないだろ!?」
悠真の必死の否定も、誰一人耳を貸さなかった。
むしろ使者の視線は冷たく突き刺さる。
「偽りは不要。我らは目にした。“蒼紋剣”が彼に応えた瞬間を」
(いやいやいや! 錆びた剣がたまたま光っただけだって!)
その夜。
屋敷の廊下で悠真は再び、ひそやかな囁きを耳にした。
「……王都へ行けば、真実を知ることになる」
「勇者という看板を背負ったまま、潰されるか……利用されるか……」
背筋を冷たい汗が伝う。
振り返るが、またも誰もいない。
「(なんだよ……誰が俺を狙ってるんだ……?)」
その晩、四人娘が悠真の部屋に集まった。
それぞれ真剣な表情で彼を囲む。
「悠真さん……王都に行くなら、私も行きます!」(リサ)
「護衛は必要よ。放っておけないわ」(セレナ)
「どうせまたトラブルに巻き込まれるに決まってる」(ミリア)
「当然、わたくしもご一緒いたしますわ!」(クリスティア)
「ちょ、待て待て! 俺は行きたくないんだって!」
必死に抵抗する悠真。
しかし四人の目は固く決まっていた。
「あなたがどう思ってても、もう“ただの脇役”じゃいられないのよ」(セレナ)
その言葉が、悠真の胸に突き刺さった。
翌朝、使者は期限を突きつけた。
「三日のうちに出立せよ。それが陛下の御意である」
村人たちの視線も、領主の思惑も、四人の少女の決意も――
すべてが悠真の肩に重くのしかかる。
「(……やっぱり逃げられないのか……)」
窓の外を見つめる悠真の表情は、苦悩と諦めが入り混じっていた。
そしてその夜、彼の夢に再び“黒い囁き”が忍び寄る。
「――お前が王都に行けば、この地は血で染まる」
悠真は眠りの中で、強く拳を握りしめた。




