第13話 盗賊団の影と勘違い救出劇
昨夜の不審な囁き声が頭から離れない。
眠れぬまま迎えた朝、俺は目の下にクマを作りながら広場を歩いていた。
「悠真さん、やっぱり顔色悪いです!」(リサ)
「休んだ方がいいですよ」(セレナ)
「……何かに怯えてる」(ミリア)
ぐっ……勘がいい。
俺は慌てて手を振った。
「だ、大丈夫だって! ちょっと寝不足なだけだから!」
三人は顔を見合わせ、同時に「……嘘」とつぶやいた。
――こいつら俺のこと観察しすぎだろ。
昼過ぎ、町の門番たちが慌ただしく出入りしていた。
耳に入ってきたのは、例の盗賊団の話だった。
「北の街道で商人の隊商が襲われたらしい」
「怪我人はいるが、町の娘をさらわれたと」
(……いやな展開だな。これ絶対、“主人公補正”で俺が巻き込まれるやつだろ)
そう思って全力でスルーしようとした瞬間。
「悠真さん! 一緒に助けに行きましょう!」(リサ)
「これは運命の試練です」(セレナ)
「……放っておけない」(ミリア)
「ちょっと待てぇぇぇ! 俺は脇役だから! 救出イベントとか場違いだからぁ!」
しかし、俺の声はやっぱり届かない。
町の有志冒険者たちが急ごしらえで討伐隊を編成。
なぜかその中心に、俺の名前が載っていた。
「悠真殿、指揮をお願いします!」
「俺なんかに指揮させるなぁぁぁぁ!」
だが人々の期待は揺るがず、結局俺は“名目上の隊長”にされてしまった。
盗賊団のアジトは、森の奥にある廃屋。
冒険者たちが正面から突入していく中、俺は必死で物陰に隠れようとした。
「悠真さん、行きましょう!」(リサ)
「先陣を切るのは英雄の役目です」(セレナ)
「……怖いなら、手を握る」(ミリア)
「余計怖ぇよ!」
逃げ場を失った俺は、渋々彼女たちの後に続いた。
廊下を進んでいると、盗賊が飛び出してきた。
「見つけたぞ!」
「うわあぁぁっ!」
俺は反射的に後ろに下がり、足をもつれさせて派手に転倒。
その勢いで床板が外れ、盗賊たちの足元が崩れ落ちる。
「ぎゃあああ!」
穴に落ちた盗賊たちはそのまま気絶。
俺はただ転んだだけなのに、仲間たちは拍手喝采。
「さすが悠真さんです!」(リサ)
「見事な采配でした!」(セレナ)
「……計算づくだった?」(ミリア)
「違うからぁぁぁぁ!」
最奥の部屋。
椅子に縛られた娘が盗賊頭に脅されていた。
「動くな! こいつの命が惜しければ!」
緊張が走る中、俺はどうすればいいか分からず後ずさった。
そのとき――背中で支えていた松明が壁の布に倒れかかる。
布が燃え落ち、隠された横穴から強い風が吹き込み、盗賊頭の目に砂が直撃。
「ぐあっ!」
その隙にリサたちが突撃し、人質は無事解放された。
「悠真さんが隙を作ってくれたんです!」(リサ)
「まさに英雄の采配!」(セレナ)
「……やっぱり偶然じゃない」(ミリア)
「いやだから偶然だってぇぇぇ!」
救出劇は町で大きな話題となり、またしても「英雄・悠真」の名声は急上昇した。
娘の家族からは涙ながらに感謝され、冒険者たちからは「俺たちの隊長だ」と肩を叩かれる。
だが、そんな祝福の渦の中で、俺は一人青ざめていた。
(これ……絶対、裏で俺を利用しようとしてる連中がいるよな……)
浮かれる人々を横目に、俺はひたすら逃げ道を探していた。
夜、自室に戻った俺は深くため息をついた。
「……俺は脇役なんだよ。なんで毎回こうなるんだ……」
しかし、窓の外には満月が照らす静かな町と、人々の歓喜の声が広がっていた。
――俺の望みとは裏腹に、物語はますます俺を中心へと押し上げていくのだった。




