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脇役な主人公補正者 ~影から世界を操る男~  作者: 源 玄武(みなもとのげんぶ)


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第12話 陰謀の影と脇役の直感

――頭が痛い。

 昨日の宴で散々食わされ、飲まされ、そして謎の修羅場に巻き込まれたせいで、目覚めた瞬間から体が重い。


「……あー、俺もう旅立ちたい。遠くの田舎で静かに畑耕したい」


 そんな願望を吐きながら顔を洗っていると、宿屋の女将さんが声をかけてきた。


「悠真さん、今朝も早いねえ。英雄様は町の宝だからねぇ、しっかり休んでね」


「だから俺は英雄じゃないんだってば!」


 俺の否定は、相変わらず誰にも届かない。


 宿を出て広場を歩いていると、領主の使いらしき兵士が声をかけてきた。


「悠真殿、領主様がお会いしたいと。すぐ館まで」


「……またかよ」


 渋々ついていくと、執務室には領主と数名の側近が集まっていた。

 その中に、昨夜の宴で俺を値踏みするように見ていた男の姿もある。


 領主は柔らかな笑みを浮かべて言った。


「悠真殿。昨日の功績、町中で話題だ。君の力は大いに頼もしい」


「いやいや! 偶然です! 俺はなんにもしてませんから!」


 必死に否定する俺をよそに、例の側近が口を開く。


「殿下、この者はあまりに謙虚すぎます。しかし――それこそが“真の英雄”の証なのでは?」


「やめろォォォォ!」


 もはや定番と化したこの流れ。俺の抵抗は今日も虚しく、勝手に話が進んでいく。



 領主館から戻る途中、町の人々が小声で話しているのを耳にした。


「最近、北の森で盗賊団が動き始めたらしい」

「いや、それだけじゃない。どうも“裏で操ってる連中”がいるって話だ」


 俺は耳をそばだてながら、こっそり心の中でツッコむ。


(絶対これ、メインストーリーに関わるやつだろ……俺は脇役だから関わりたくないのに!)


 だが同時に、背筋に妙な寒気が走った。

 昨夜の側近の視線、そして今日の会話――偶然とは思えない。


(……嫌な流れだ。物語的に、絶対俺を巻き込む展開だろこれ)


 宿に戻ると、既に三人が待ち構えていた。


「悠真さん! 領主様に呼ばれたって本当ですか?」(リサ)

「きっとまた新たな使命を託されたのでしょう」(セレナ)

「……危険な任務なら、私も一緒に行く」(ミリア)


「いやいや! 俺、ただ呼ばれて雑談してきただけだから!」


 三人は顔を見合わせて、揃ってうなずいた。


「……やっぱり隠してる」(ミリア)

「悠真さん、そういうところが逆に信頼できるんです!」(リサ)

「謙虚な人ほど大きな運命を背負うものです」(セレナ)


「勝手に美化すんなぁぁぁ!」



 その日の夕方。

 町を散歩していると、妙に冷たい空気を感じた。

 視線の端に、一瞬だけ黒いマントの男が立っていた気がする。

 だが振り返った時にはもう姿はなかった。


(……気のせいか? いや、こういう“気のせい”は絶対気のせいじゃないやつだ)


 胸の奥で脇役らしからぬ直感が騒いでいた。



 その夜、宿屋の部屋で横になっていると、窓の外から低い声が聞こえた。


「……あの青年だ。英雄の証を得たらしい」

「処理するか?」

「いや、しばらく泳がせろ。使えるかもしれん」


 俺は布団を頭からかぶり、必死に聞こえないふりをした。


(やっぱり俺狙われてるじゃねーかぁぁぁ!)


 心臓がバクバク鳴り、眠れぬ夜が過ぎていった。



 翌朝、顔色の悪い俺を見て、リサが心配そうに声をかける。


「悠真さん、大丈夫ですか? 顔が真っ青です」

「ま、まさか毒でも盛られたのでは……?」(セレナ)

「……誰かに狙われてる?」(ミリア)


 図星すぎて、俺は笑うしかなかった。


「いやいや、考えすぎだって……ははは……」


 ――こうして俺はまた、脇役でいたいのに陰謀の渦へと足を踏み入れていくのだった。





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