沖田とデート②
大阪――。そこは、江戸時代に天下の台所と呼ばれた大都市。この時代、首都は江戸であったが、経済的には京都や大阪の方が江戸よりも歴史、経済ともに上を言っており、庶民の間でも京都が国の中心、大阪が経済の中心という認識が何となくあったらしい。(ゲームの解説で読んだ)
京都から大阪まで長い長い距離を徒歩で歩く俺達。途中、何度も何度も休憩を挟んでいた……。
「……はぁはぁ、なぁ沖田よ」
「えぇ? 何ですか? また休憩ですか?」
沖田が、俺を睨みつけてくる。しょうがないだろ? 昔の人は平気かもしれないけど、現代人が京都から大阪まで徒歩で向かうなんて事、滅多にないんだよ!
俺は、予想以上に疲れの溜まってパンパンになった足を擦りながら沖田の着物の袖をギュッと握り、訴える。
「頼む! 頼むよ。もう一度……もう一度だけ……!」
しかし、当の沖田はというと……。
「……はぁ。芹沢さん、これで10回目ですよ? 何度休憩取れば良いんですか? これじゃあ、今日中に大阪へ到着できませんよ?」
沖田は、平然とそう言うけど、そもそも今日までに大阪へ到着するなんてハードスケジュール過ぎるだろう? 無理に決まっている。ただでさえ、京都~大阪は湿気が強くて暑いし、険しい道も多いのに……。
「勘弁してくれよ。全く……」
「はぁ。全く仕方ありませんねぇ。ちょうど目の前に宿場町が見えてきましたし、ここらでもう一度休憩を取りましょう」
と、いうわけで沖田の提案通り、俺達は目の前に見える小さな宿場町まで歩いて、町の中心にあるお茶屋の椅子に腰かけ、団子を2つ貰う事になった。
「……いらっしゃい! あらまぁ! お2人さん、旅の人かい?」
「えぇまぁ……」
京都から少し離れた場所に来た事もあってか、お店の人も俺の事を知らないみたいだ。良かった……。どうやら、芹沢鴨の悪評も大阪の方に行けば殆どないと言っても過言じゃないみたいだ。
なんだか、少し元気が出てきたかも。
しばらく待っていると、お店のお姉さんがお団子とお茶を持ってきてくれた。
「……お待たせね。出来立てだよ。新婚さん! さぁさ、召し上がれ」
「は!?」
俺は、思わず飲んでいた茶を口から盛大にぶちまけてしまっていた。と、ふと隣を見てみると……。
「……」
あら? 沖田? おーい、沖田さんや。
……ダメだ。勝手に芹沢の嫁にされた影響で、完全に思考がショートしている。口をぽっかり開けたまま沖田は、しばらく動かなかった。
お姉さんは、そんな俺達の反応を楽しそうに見ている。
「……あらまぁ、照れちゃって!」
「い、いや別に……照れてなんか……! ていうか、誰がこんな奴なんかと結婚なんか……」
――隣からどす黒いオーラを感じ取って見てみれば、先程まで放心状態だった沖田から漆黒のオーラが溢れ出ていた。
「ヒッ……!」
なっ、なんだ? 怖いぞ……。すっごく怖い! 今にも刺してきそうな迫力だ。すると、沖田は黒いオーラを展開したままニッコリと笑って俺の手を力強く引き寄せて来て、言った。
「……そうねぇ。私達、最近籍入れたばっかりですものねぇ? ねぇ、ア・ナ・タ?」
「ひぃぃぃぃぃぃ!」
「まぁ! やっぱり! 素敵だわぁ。結婚式は、何処でお上げになられたのですか?」
「本能寺」
「あらまぁ! 素敵やねぇ!」
「いや待て! 団子屋のお姉さんや……どう見たって俺達がラブラブカップルには見えないだろう? ほら、沖田のこの恐ろしい顔を見て……そうは思わないはずだろう! ていうか、本能寺でコイツと結婚式なんて……俺、死ぬだろ? 絶対に死んじまうだろ!」
「結婚を決めたきっかけは、あるのかい? 南蛮の方で言うプロポーズ? ってやつを聞かせてくれ」
「……それはもう、敵は……じゃなくて、夫は本能寺にあり! とそれは、もう大胆に」
「まぁ、大胆!」
「大胆! じゃねぇだろ! 本当に死ぬだろ! キャンドルどころか、寺全体に火をつけられて命ねぇよ!」
「誓いの言葉は、どんなもんだい?」
「最早、これまで……」
「まぁ! 旦那ったら腹を括ったんだね!」
「違う意味でな! それ完全に腹斬る3秒前のセリフだからな!?」
と、その後も沖田の暴走は止まらず、俺達は休憩とは到底言い切れないようなひと時を過ごす。その結果……。
「……おいおい! あの2人、最近結婚したばっかりらしいぜ?」
「あらまぁ、あんな綺麗な人が……素敵やわぁ」
気づくと町全体にその噂が広がっていた。……ま、マジかよ。
「なぁ、沖田よ。これは、流石にやり過ぎだろ?」
しかし、俺がそう問いかけた次の瞬間――。
「……あら? どうしました? 旦那様?」
「…………ん?」
今、なんと?
「……大丈夫ですか? 旦那様? ボケっとして……。あっ、もしかしてお腹が空いているんですか?」
「え? いや……別に……」
急に沖田の様子が変わった? さっきまであんなにムスッとしていたのに……急にこんな……。
その姿は、まさに可憐な乙女そのものだった。彼女は、自分の食べていたお団子を1つ、俺に渡してきて言った。
「はい。あーん……」
「え!? えぇ!? いや、おい! 待てよ。お前、急にどうしちまったんだ?」
だが、問いかけた所で沖田は止まらない。彼女の団子がこちらへ近づいてくる。
そして、それと同時に周りでも……。
「……まぁ! なんて大胆!」
「羨ましいわ!」
クソ……そう言う設定になっちまってるせいで、引くにも引けない。こうなれば……。
「ええい! なるがままよ!」
沖田の差しだして来たお団子をパクリ! 俺は、大口開けて食べる。すると――。
「え……!?」
その瞬間、俺は思わず声が漏れそうになってしまうくらい驚いてしまいそうになった――。




