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18・胃がキリキリ

 青々とした空からは陽射しがよく届く。

 そんな穏やかな天気の日にはお弁当を用意して、ひなたぼっこするーーそんなお出かけをしたい。


「うぅ…」


 しかし今日の私は華やかなワンピースで着飾っている。


「アリシアちゃん、どうしたのぉ?」


 お腹に手をあてる私を不思議そうに見るジムノさんも今日は一段とキラキラと輝いて見える。物理的に。

 それもこれも、すべては劇場立て直し計画のためだ。


「胃が…」


 キリキリする。

 私がお腹に手をあてている理由。

 それは今日、美貌と実力を兼ね備えた話題の役者、マリィ・フリンジさんに会うことになったからだ。




『なにを悩んでいるぉ?』

『審査員の依頼を受けてくださる役者さん探しがうまくいかなくて』


 そう、ジムノさんが声をかけてくれた日、私は公開オーディション内容を考えていた。

 私が考えた企画の中で、オーディションも重要だけど、その後に公開する舞台の成功も重要なのだ。ソポさんやジムノさんが参加してくれているいるけれど、もう1人、いて欲しい人材があった。


 それは、オーディション参加者そして観客をきつける審査員をする役者さんだ。


 この役者さんが審査してくれるなら”参加してみよう”、この役者さんが出るなら”観てみよう”と思ってくれるような安心感を与えてくれる役者さんが欲しかった。


 でも、我が劇場との関わりがある人は有名になっていて出演も報酬の交渉も難しい。かと言って、交渉可能な役者さんは若手の方ばかり。新作舞台の出演には前向きな返事をもらえても、観客の前で審査するのは役者自身へのリスクが高すぎてしまい良い返事をもらえない。


『そっかぁ。だったら、ボクの伯母おばさんを紹介してあげるよー』

『伯母さん? 音楽家の方じゃないんですか?』

『ううん? アリシアちゃんが知らないなら求めている役者さんに該当しないのかもぉ。そこそこ有名になったと思ってたけど…伯母さん悔しがるかもねー』


 クスクスと声を漏らすジムノさん。


『い、いえ! 私がただ勉強不足ということがあると思うのでっ! お名前を、教えてください!!』

『いいよー。たしかねぇ…マリィ・フリンジって名前で活動しているんだぁ』

『えっ! マリィ・フリンジさん!? ジムノさんの、ティサ家の方だったんですか!?』

『そうだよー。結構有名な話だと思ってたんだけどぉ・・・あれぇ?』


 いろんな情報が一気に流れ込んできて私の頭の中はパニックである。

 不思議そうに首を傾げるジムノさん。


『貴族の噂話なんて、小娘のアリシアが知っているワケないだろうが』


 そんな噛み合わない私たちをソポさんが静かに一刀両断した。


『そっかー。驚かしてごめんねぇ』

『いえ』




 そうして色々ジムノさんからお話しを聞き「是非に、交渉させてください」とお願いして、今日を迎えた。

 ティサ家の方ということは上級貴族。身嗜みをいつもの着古している普段着ではなく、貴族の方にお会いできるような上等なものを選んだ。

 事前にある程度聞いているとは言え、貴族で、実力派役者のマリィさんに会うなんて緊張するに決まっている!


「アリシアちゃんって、本当に面白いよねぇ」

「へ?」

「ソポに直談判したりして大胆な行動するのに、伯母さんに会う時にはうさぎちゃんにみたいに繊細だったり。見てて飽きないよぉ」


 なにやら楽しそうなジムノさん。

 いまは目の前のことにいっぱいいっぱいですが、こんな前世のいかにも日本人らしい繊細さを面白く思ってもらえるならなによりです。


「ありがとうございます…」

「うんうん。伯母さんとの交渉がうまくいったら、おっきい声でそれ言ってねぇ?」


 にっこりと笑うジムノさんのはがねメンタルがほしい。

 ソポさんの時は無我夢中っていうか、あとさきに考えてなかったというところもあった。いまはいろんな人が関わってきて、周囲に及ぼしている影響力に驚いているし、失敗できないってプレシャーが見えてきてしまった。


 でも、ここで自分が頑張らなくてどうする。

 劇場経営を立て直し、そして、マーカスとの婚約を解消するんだ。

 交渉はハッタリが重要って前世でも耳にしていたし、頑張るぞ!

 精神年齢は私が上! 私が上!! 私は大人!!

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