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11・棚からぼた餅?

「こほん。それでいつまでそこにいるのよ」


 マーカスに食べかけられたパンを丸ごと渡した。私はもう1つ残っていたパンを食べた。

 謎すぎるマーカスの行動は意味がわからなかったけど、小腹が空いていた上に、私が食べている様子を見て食べたくなったんだろう。

 うん。理解した。マーカスの行動理由もわかって動機息切れはひとまず収まった。


「食後の休憩だ」


 マーカスが真剣な顔で言った。たしかに食べてすぐに動くのは体に悪いとは思うけど。


「アリシアも休憩するだろう」

「え、まぁ?」

「休憩がてら、お前の立て直し計画とやらの状況を聞いてやろう」


 にやりと笑うマーカス。


「はぁ?」


 やっぱり意地が悪い。私がの計画がうまくいっていないと思って。

 でも残念でした! いまのところほぼ順調なんだから!!


「私の計画にご興味があるとは思わなかった。あ、そうよね。どれくらいまで婚約者として扱わないとわからないから気になるわよね、順調だからご安ください。かの有名なソポ・グレースさんが参加されることになったから」

「知っている」

「知らないでしょうけどソポ…」

「知っている」


 マーカスはそう言って、私が説明している途中だというのにひらりと1枚の紙を目の前に掲げた。


「こ、これは、私が作ったオーディション告知のチラシ…なんでマーカスが持っているのよ…」

「あの辺りの店通りでお前が配っていただろ」

「そう、だけど」

「そのことが俺の耳に入らないとでも思っていたのか?」


 この街で貿易商として各店との繋がりを持つマーカス。

 つまり”そんなこともお前はわからないのか”と言っている!


「っ〜! じゃあ、なんで聞いてきてるのよ!」

「はぁ。お前、このチラシをたくさんきたいんだろ?」


 マーカスは呆れたように私の目の前でチラシをひらひらと振る。


「ま、だ、だからサリーとかに協力してもらっているし…」

「はぁ。俺に声掛ければいいだろ。こんな風にムダに時間も体力も使わずに済む」


 私の頭から足先までくるりと視線を動かしたマーカス。

 きっと朝から動きまわって着崩れヨレてしまっいることを目で指摘したのだ。意地が悪い。でも、それよりも私の中で許せないマーカスの言動があった。


「ムダってどういうこと!? 街の人々と交流をもつことは大切なことよ!」


 マーカスが持つチラシを奪うように引っ張る。

 ビリッと音がしたけどもういい。


「あー…そうだな。言い過ぎだ。すまん」


 すまん、すまん!? マーカスが謝った!?!?

 いつの間にか地面に落ちていた目線を上げると、マーカスはチラシを持っていた手のかたちはそのままに、視線をウロウロとせわしなく動かしていた。

 どんな時も余裕ぶって偉そうな態度をしているマーカスが慌てている…?


「へ?」

「街の人々の交流は大切だ。アリシアの言う通りだ」

「そ、それは、よかった?」


 はじめて見るマーカスの姿に私は驚いてうまく言葉が出てこない。


「俺が伝えたかったのは、その、以前言った言葉の通り…アリシアを応援したいんだ」


 最後の方が小声でよく聞こえなかったけど、マーカスが絶対言わないであろう言葉を口にしているような幻聴が聞こえたような。


「え、ん、なに? つまり、どう言うこと??」

「〜〜っ! とにかく、このチラシは俺がもらっていく! 悪いようにはしないから安心しろ!!」


 マーカスはそう言うと、チラシのたばが入った袋を乱暴に持って立ち去っていった。


「へ?」


 ポツンと、ベンチに取り残された私。

 結局にマーカスは何をしに来たかったのか、よく分からなかった。

 とりあえず”棚からぼた餅”的な感じでマーカスがみずからチラシ配りに協力してくれることになったからラッキーってこと、だよね?


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