第九十七話 神崎家 その5
感情的になればなるほど、あのジジイの思う壺だ。
おそらく、精神が不安点なほど、心の隙をつかれ洗脳にかかりやすくなる。
そんなことは分かっている。
分かっているが、こんな光景を見せられて、冷静でいられるはずがない……!
「アリス!」
『はーい!』
肩に乗っていたアリスが両手を前に突き出す。
突き出した掌から、炎の球が出現し、それはみるみるうちに大きくなり、3メートル直径は超えるであろう球体になる。
「変幻自在の魔法、底の見えない魔力量……。召喚獣の範疇を大きく超えている」
うすら笑いを浮かべながら、神崎家当主。たしか……名前は神崎道満。
アリスを召喚して数日たった頃、俺に会いにきた。今思えば、俺ではなくアリスを見にきたのだろう。
こいつはおそらく、娘の神崎碧を使って、俺につけ入ろうとしていた。
執拗に俺に近づこうとしてきたのは父に命令されたからだったのか。
「……目的はなんだ、アリスを使って何をしようとしている」
「それを知ってどうする。手でも貸してくれるのか?」
「内容しだいだな」
「嘘をつくな、表情にでているぞ。……まぁいい、教えてやろう」
道満の隣に、彼の召喚獣であろうものが出現した。
まるでカタツムリのような形をしており、全身が真っ黒だ。
「こいつが私の召喚獣だ。正確には、こいつの中で、召喚獣に寄生している召喚獣だな」
「……寄生?」
召喚獣をよく見ていると、中で何かがうねうねと動いている。
「私の召喚獣は特殊でな、魔法が一切使えないのだよ」
「使えない? 何を言ってやがる。散々人の頭の中いじりやがって」
「最後まで話を聞け、だからガキは嫌いなんだよ。 ……魔法は一切使えないが、召喚獣に寄生し、寄生元の召喚獣の能力を使用することができる」
…………。
「一度寄生した召喚獣に卵を植え付けることにより、行動を強制できる。つまり、一度寄生した召喚獣は俺の思う通りに動かせる。」
「……察しはついた。もう喋らなくていいぞ」
「アリスに召喚獣を寄生させる。そして、卵を残した召喚獣達を強化させ、この日本を……」
「もう喋らなくていいって言っただろ。 ……だからジジィは嫌いなんだ、話を聞かないからな」
分かりやすくていい、これなら、なんの迷いもなくぶっ飛ばせる……!
「アリス」
『ゆるさないから、おじさん!』
火球が道満目掛け放出される。
そして、道満に当たる寸前、何かが火球と道満の間を遮った。
砂埃が舞い、あいつの姿が隠れる。
「くそっ、あの馬鹿!」
アリスの火球を止められる召喚獣なんて、俺の知る限り1人しかいない……!
「今寄生させている召喚獣の能力は洗脳だ。こいつは直接その召喚獣に触れた。いくら結界で防御しようと、直接触れるのとさえできれば、結界なんぞなんの障害にもならんわ」
「我が最高で最硬の召喚獣が、あなたをお守りします。」
『ミドリガメ〜』
共に潜入したはずの皇翔介が、俺の前に立ちはだかった。




