第九十六話 神崎家 その4
召喚士になるための条件は、召喚獣に気に入られることだ。
召喚獣は、自身気に入った召喚士を見つけ、その人の元に儀式を通して現れる。
その要素はその人の性格だったり、魔力の質だったりと不透明なため、どんな召喚獣が召喚されるかは分からない。
特殊な魔法を扱える召喚獣、基礎の能力が高い召喚獣等、それぞれの召喚獣が個性を持っているが、大体の召喚獣の能力値にそれほど差はない。
だが、時折、全ての能力値が他とは桁違いの召喚獣が姿を現す。
その一つが、妖精種のアリス。
大昔に観測された召喚獣であり、他の召喚獣よりも膨大な魔力量を有している。
だが、アリスに関する情報は文献にかろうじて記録が残っているだけであり、最近までは存在しなかったのではないかという意見もあった。
そう、十年前までは。
「俺も御伽話だと思っていた。だがあれを見た瞬間、実話だったんだと実感させられた!」
興奮し、笑みを浮かべながら彼は続ける。
「あの羽虫の魔力があれば、間違いなく洗脳により、世界を支配できる! なぁ、ロイよ!」
背中に被さっている真っ黒い生物に向け、そう言い放った。
黒い生物も返事をするように、ゆさゆさと体を動かす。
……ダメだ、やはり身動きがとれない。
「ミドリガメ! 私の背中に乗っている召喚獣を排除し……」
そこで言葉が止まってしまった。
「バカめ、軍のトップがこのザマでは、わが国の未来が危ういな。 よく聞け、我が召喚獣の能力は催眠だ。対象の記憶を俺の好きなように操作、撹乱ができる。……そして、その対象は人間だけではない」
我が最愛の召喚獣は、私に向けて殺気を放っていた。
「なっ……!」
「驚く暇などないだろう」
いつの間にか私の近くに移動していた彼に、直接頭を触られる。
その瞬間、激しい眩暈に襲われ、意識が途切れた。
「最強の召喚獣と呼ばれる男がこの程度とは、この国も落ちぶれたものものだな」
その男は悪態をつきながらこちらに視線を向ける。
「そうは思わんか、斎藤冬至よぉ!!」
瞬間、背筋に寒気を感じる。
でも、今は、それ以上に…
「「ぶん殴る!!」」
隣にいる悪友と、そう叫んだ。




