第九十五話 神崎家 その3
「くっ!」
自分にめがけ放たれる風の刃を、召喚獣を目の前に移動させ防御する。
くそっ、想定外だ!
思っていた以上に敵の催眠は強力だった!
「兄貴、なにしてるの?いま神崎さんの屋敷に侵入者が入り込んでいるんだよ! はやく排除しないと……!」
共に屋敷への増援を食い止めるはずだった我が妹が、今は屋敷へと増援を送ろうとしている。
「目を覚ませ好実! なぜ自分がここにいるのか忘れたのか⁉︎」
「忘れてないよ! 一緒に侵入者から屋敷を守るために、この場所にきたんでしょ!」
最愛の妹を傷つけるなんて、私にできるはずがない。
つまり、好実の催眠を解除しなければ、このままジリ貧になってしまう!
……たしか、『強い衝撃を受けた時、催眠は解除される』とあのバカ2人組が言っていたな。その衝撃は精神的なものでも効果はあると……。
しかたがない…か。
「好実! いまからおっぱいを触るけど、いやらしい気持ちはないからな!」
「……….何言ってるの?」
立ち止まり、ゴミを見る目を向ける好実。
「仕方ないだろう、最愛の妹を手にかけるなんてことはできない! 理解してくれたのなら大人しくおっぱいを触らせてくれ!」
「だから何言ってんのあんた!」
頬を紅潮させ、自分の体を抱く好実。
こんな可愛い妹のおっぱいを触れるなんて、私はなんて幸せ者なんだろう。
「いくぞ!」
「こないでぇ!」
いつのまにか立場が逆転しているが、気にしないでおこう。好実のためだ。
おっぱいを目掛け一直線に突き進む、軍で長年トレーニングしていたおかげか、妹との距離ははみるみるうちに縮まり、手が好実に届く位置まで近づく。
「すまない、好実。すこし眠っててくれ」
手を振りかざし、肩を目掛け振り下ろす……。
「なっ、ぐっ⁉︎」
突如、空からから黒い塊が大きかぶさった。
お、重い! 抜け出せない……⁉︎
「ほう、催眠を防御したのか、流石は皇家の倅だな」
黒装束を身に纏った、初老の男がゆっくりと近づいてくる。
「……神崎殿、これまでの狼藉、どう責任をとるおつもりか?」
神崎家の当主は、うすら笑いを浮かべながら、ゆっくりと腰を下ろす。
「簡単なことだ、事実を知る者すべてに催眠をかけ、我が手中に収める。お前もゆっくりと催眠をかけ、私の駒として動いてもらう」
「無理だな、私が戻らなければ、軍がこの家を侵略する手筈になっている。私に目をつけられた以上、貴様にもつ勝ち筋は残っていない!」
神崎殿の薄ら笑いは消えず、立ち上がり私を見下ろした。
「今私の屋敷に侵入している、斎藤冬至。あやつの力があれば、軍どころか、世界中全てを制圧できる!!」
やはり、狙いは斉藤冬至か。……いや正確には。
「斎藤冬至が指摘している召喚獣、妖精女王アリス。まさか千年の時を超えて、あのガキの元に来るとはな」




