第九十一話 真相 その1
『私の言うことを聞くとこが、碧の役割であり、幸福なんだよ』
子供の頃から、よく言われていたことがあった。
口数は少ないからか、その言葉は私の中に残っている。
そして、その言葉の通りに生きてきた。
言われた通り、辛く、苦しい訓練を行った。
言われた通り、召喚獣継承の儀式を行い、召喚獣を手に入れた。
言われた通りの学校に進学し、言われた通り優秀な成績を取った。
父が私のことを褒めてくれた事は一度もなかったけど、人と話さない父が私とだけ話してくれるから、認められている、頼りにされていると感じた。
名家の出身であり、小さい頃から召喚獣を使役していたこともあり、周りの人達はなんでも言うことを聞いてくれた。
何不自由ない暮らしを送っていた。
だけど、1人だけ私の想定外の行動をする人がいた。
その人は私の行いを間違っていると指摘し、あるべき姿を提示した。
最初は聞く耳を持たなかったが、なぜ私に指摘できるのか、指摘するだけの実力はあるのかと疑問に思い、彼を観察するようになった。
彼の行動は己自身の思想に基づいたものだった。
自身がやりたい事をやり、自身の考えを周囲の人に話し共有していた。
最初は馬鹿馬鹿しいも思っていた。
自己の思いを優先する事、それはただのわがままだと。
だけど、自身の思想に忠実な彼に、少しずつ憧れを抱くようになった。
私と違って心のままに行動し、その結果を真摯に受け止める彼の姿は、とても格好良くみえた。
彼のようになりたいと思い、彼に付き纏った。嫌がるそぶりをしていたが、その姿を見てもっと一緒にいたい、もっと彼の近くにいたいと思うようになった。
そんな時、父から『命令』を受けた。
『彼を我が家に引き込め、彼は優れた才能を持っている』
父の言葉は絶対であり、最優先。
私の家の威光にへりつくだう方たちと徒党を組み、私が頂点のピラミッドを作った。
それにより、彼の情報はすぐ私の耳に入った。
授業はよくサボり、成績は良くない。
よくトラブルを起こす、学園の問題児。
『高橋勇気』という生徒とよく一緒に行動している。
耳に入ってくる情報はとても父が欲しいと思うような人物ではなかった。
なぜ父が彼を欲しがっているのか検討がつかなった。
だけど、彼の召喚獣を見た時に確信した。
父が欲しいのはこの力だと。
私は彼と接触を図った。
これが、間違いだった。




