第八十九話 役割分担
「作戦内容に入ろう、まずは囮役の勇気から説明する」
「あ、もう僕が囮になるのは決定してるんだね……」
「仕方がないだろう、適材適所だ。瞬間移転術が使えて、召喚獣召喚者共に素早く動けるて能力も逃走に向いている。逆にお前以外にはできない役回りなんだ、理解してくれか?」
「……仕方ないね、今回は冬至のためにきつい役回りを担当してあげるよ」
「すまん、助かる」
冬至はそう言うと、安心したように少し微笑んだ。
『……いいのか? 彼簡単に騙されて仕事押し付けられているんだが』
『いいのよ、バカの扱いは冬至に任せておけば』
何か不穏な会話が聞こえてきた気がした。
「それじゃ、作戦内容自体は前回の皇家襲撃と変わらないの?」
「ああ、勇気を囮役に他メンバーが家に侵入する。俺は玄関口で援軍を抑え、皇兄弟が黒幕を叩く。前回と人員の変更こそあるが、大筋は変わらない」
なるほど、各召喚獣の能力を加味すると、悪くないように思える。
だけど、
「冬至それじゃだめだ」
「……どういう意味だ」
「作戦自体は別にこれで問題ないとは思うけど、人員配置がだめだね」
「……各人員の能力を考えての配置だ。間違いなく最善だと思うが」
「能力だけを考えて配置しているからダメなんだ。冬至、君は本当に玄関口で援軍を抑える役でいいの?」
こいつは成功のため、自分の意見を取り入れていない。
だれよりも神崎さんのことを思っているのは、こいつだというのに。
「………」
「囮役は私が引き受けるわ」
「……いいのか、大事が起こった場合助けに行ける確率は低いぞ」
囮役…… つまり常に逃げ回る必要がある。いつどこで攻撃に当たってしまうか分からない役回りだ。好美の召喚獣はスピードこそあれど体が大きいため、被弾は免れない。なおのこと危険だ。
「いいのよ、冬至と勇気には借りがあるからね。それに私のグリフォンなら数発ぐらい攻撃が当たっても平気よ。結構頑丈なのよ。うちの子は」
「……たすかる」
「ならば、私が玄関口を抑えよう。家内への侵入を阻止するのなら、私の召喚獣が1番上手く立ち回れるだろう。なんて言ったって最堅の称号を手にしているからな」
たしかに、皇さんの召喚獣の硬さは以上だ。冬至の代わりは務まるだろう。
「(冬至、お兄ちゃんはこの前のこと、あんたたちに借りを作ってしまったと思っているのよ、ずっと催眠にかけられていたみたいなものだし。だから、その借りを返させてあげて)」
好美がそっと冬至に耳打ちをする。
僕たちはずっと彼に恨まれていると思っていたけど、そんなことなかったんだ。妹が絡まない限りは常識人なのかもしれない。
「……わかった。囮役を好美、玄関の掌握を皇に任せる。そして俺とこいつでケリをつける。それでいいな?」
「それでいきましょう!」
「うむ、それがいいだろう」
冬至の大雑把な作戦に2人が賛同する。前回と違い今回は頭数があるし、実力も折り紙つきだ。心強い。




