第八十八話 助っ人
「それで、なにか案はあるの?」
机に突っ伏しながら悪友に問いかける。
前回の突入作戦の時は、囮にされる、格上相手と戦わされる、囮にされる、と僕の負担が明らかに大きかった。成功したのは運の要素が大きい。
こいつもバカじゃない、むしろ頭は回る方だ。きっと前回の失敗を糧に成功への道筋を組み立ているに違いな……
「囮作戦でいく」
このつは僕の思っている以上にバカなようだ。
「またそれ⁉︎ いやだからね、囮役はやらないからね!」
「安心しろ、今回お前の役は囮じゃない」
「はぁ、よかった。流石にもうゴメ……」
「餌だ」
「それって結局囮だよね⁉︎ なんなら囮よりも負担大きそうなんだけど⁉︎」
「まぁ落ち着け、今回は助っ人を呼んでいる」
「助っ人?」
「ああ、呼んであるからもうすぐこの教室に来ると思うぞ」
待つこと数分、ドアがガラガラと開かれた。
「久しぶりだね、斎藤君。そして 高橋君」
皇翔介齢十八で日本軍に加入し、わずか六年で副司令官まで上り詰めた実力者。
皇邸での戦闘では大いに苦しめられた、実力者である神崎さんと協力しても手も足も出なかったほどに。
そんな彼が協力してくれるのなら100人力だ。
だけど……
「どうして協力してくれるんですか?」
僕らに対し恨みこそあれど、恩はないはずだ。今回の相手は御三家の一族。下手をすれば軍からの追放なんてことも考えられる。
「フッ、愚問だな。私が動く理由なんて基本的に一つだけだ」
「一つだけ?」
「あぁ、長くなるがいいか?」
「は、はい」
長くなる……か。やはり家庭のことや軍のことに関係しているのだろうか。彼ほどの人間が動く理由なんて僕じゃ想像もつかない。長話を聞くのは得意じゃないけど踏ん張って聞こう。
「可愛い妹に頼まれたからだ」
一言で終わった。
「妹? それって好実のことですよね、理由それだけ?」
「それだけな訳ないだろ、ぶちころすぞ貴様!」
「え? あ、ごめんなさい……?」
ど、どうしたんだろう。僕怒らせるようなこと言ったかな?
「いいか好美は生まれた瞬間から全人類の可愛さを凝縮したような天使だったが、年齢を重ねるごとにそれはどんどん成長していく……。私がいったいどれだけ可愛死にしそうになったことか……。 俺はなぜこんなにも可愛いのか知るために、天使を日々ストーキングすることにしたんだ。そして俺は気づいた。なぜこんなにも愛おしいのか…… その理由を僕は見つけたんだ」
「……まさかとは思っていたけど、皇さんって……」
「ああ、お前が今考えていることで間違いない」
ということは、彼は……。
「シスコンなんですね」
「違うシスコンじゃない! 婚約者だ! 私と好美は13年と5ヶ月前に結婚の約束を取り付けている! 二度と間違えるなよこの養鶏場やろう⁉︎」
「冬至、彼は本当に役に立つの?」
「実力は確かだからな。問題ないだろう。それに、バカなやつの方が扱いやすいしな」
「ははっ、そうだね」
「だが、今回は2人もいるから俺の負担は大きいな……」
「冬至、もう1人って僕のことじゃないよね?」
はぁはぁと息を整えながら、皇さんは話を続けた。
「話を戻すが、好美…… いや、ここは貴様らに私たちの関係を認識してもらうために奥さんと呼ばせてもらおう。それで、奥さんは最近胸の小ささを気にし出してな」
ここの内容だけ聞くと、とんでもない誤解をされそうな危ない内容になってしまった。
「その光景を隠れて見ていた私はそっと囁きかけたんだ。『奥さん、君の胸は今の大きさが1番可愛いよ』とな、そうしたらこう返答が来た。『だって、あいつは大きい方が好きだから……』と。奥さんはなんと私の好みを把握していたんだ! これはもう結婚するしか……」
「なに話とんじゃぁぁ!!!」
「ぐべらぁ!!」
いつの間にかに教室に入ってきていた好美の踵落としが、皇さんの頭に直撃し、そのまま床に倒れ込んだ。
「今回は、俺、勇気、皇翔介、奥さんの4人での作戦になる」
「今1人亡くなったんだけど……」
「だれが小さい胸よ! 寄せればそこそこあるわよ!」
本当にこのメンバーで大丈夫なんだろうか。
そんな不安を抱えながら、3人(+1人)で作戦会議を始めた。




