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第八十六話 最悪な目覚め


「されとるの、思いっきり」


 ……やっぱりか。

 明らかにありすと記憶の齟齬が発生していた。それに俺も自身の記憶に違和感を覚えている。 


「冬至や、お主最近記憶いじられすぎじゃないかい? 小さい頃から魔法抵抗の稽古をつけてやっておったというのに……。召喚獣に頼りすぎな証拠じゃの」

「ぐっ……」


 たしかに、魔法の抵抗レジストについては小さい頃から勉強していた。ほとんどの魔法の抵抗はできるはずなのに実際には実行できていない。

 練習を疎かにしていた成果がバッチリと出てしまった。


「これに懲りたらサボらず鍛錬することじゃな」

「……分かってる。それで、どうすれば記憶を元に戻せる?」


 そう聞くと、ばあちゃんは淡々と告げた。


「冬至ががかけられているのは催眠じゃな」

「催眠?」

「うむ、皇家の記憶改変の魔法とは別物じゃ。ただ催眠にかけられているだけじゃから、頭強い衝撃を受ければ解けるじゃろう」


 強い衝撃か、どうしたものか。

 ありすに頼むは……なしだな。少しでも力の調整をミスれば体ごと消し飛ぶ可能性がある。

 ババァにも無理だろう。若い頃ならともかく、今のババァには俺に強い衝撃を与えられる術はない。

 仕方ない、明日勇気にでもやってもらうか……。


 そう思いつつ正面に目を向けると。


「ぶべぇ!」


 上裸のババァがいた。


「なんつーもん見せやがる! 殺す気か!」 

 あまりの醜悪さに意識が持っていかれそうになった。

「どうじゃ、せくしーじゃろ?」

「殺すぞババァ!」


 吐き気とともに怒りが込み上げてくる、このババァ、庭に生きたまま埋めてやろうか……!


「なんじゃ、おなごの裸を見たのにその反応は」

「大切な事を言うぞ。『おなご』ではない、妖怪の類に近いからな!」


 もし本当に妖怪を見たとしても驚くことはないだろう。


「冬至はモテんからの、少々刺激が強かったか」

「何言ってやがる、最近は不本意ではあるが………」


 ……最近は不本意ではあるが、女性が近づいてくる。

 ……最近になって急に女性が近づくようになった。

 ではなぜ今になって女性が近づいてくるようになったのか。

 なぜ今まで女性が寄り付いて来なかったのか。


 その理由は、俺が1番知っている。


「……どうじゃ、目は覚めたか?」


「ああ、最悪な寝起きにだがな」


 神崎碧。

 おれは、ずっと昔から知っている。


「とりあえず、次はバカを起こしに行くか」



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