第八十四話 知らない
パレードがおわり、賑わっていたメインストリートから人は姿をを消していった。
時刻は19時を回り、客はだんだんと帰路に着いていく。
「……冬至、改めて聞きます」
顔をほのかに染めながら、ゆっくりと振り向く。
……ちゃんと答えなきゃいけないか。
「私は、あなたのことが大好きです」
その目はいつにもなく真剣だった。
正直、今回は楽しかった。
初めて神崎と遊び、そして神崎を知った。
こいつとの会話をするときは、『自分』が自然体でいられる。
それは、勇気と好実以外では出すことができないのに。
だからこそ、俺は真剣に答える。
嘘偽りない、俺の本心を。
「俺は……」
彼女の背中を目で追い、やがて見えなくなった。
「よかったの? 冬至みたいなブサイクを好いてくれる人なんてこれから現れないかもしれないのに」
「お前ほどじゃないから大丈夫だ」
俺に、俺たちに何かを隠しながら接していた。
そんな状態では、付き合うなんてことできるわけがない。
「帰るか」
「そうだね」
目的は達したというのに、心は前よりもずっと重くなっていた。
「ありす起きろ、帰るぞ」
胸ポケットをトントンと揺さぶり我が召喚獣を起こす。昼間存分にはしゃいでいたせいかパレード中はずっと眠ったままだった。
『ふぁー、おはよ。とうじ』
目を擦りながらひらひらと舞い上がり、俺の頭の上にちょこんと乗った。
「あんなに騒がしかったのによく眠ってられたな」
『ふふん、すごいでしょ』
「いや、ほめてないんだが……」
『もー、どうしてもっていうから、あおいにはてをださなかったのに……。わたしをほめないとでこぴんするわよ!』
言動こそ子供そのものだが、内蔵している魔力量はそこらの召喚獣とは桁違いであるため、デコピンなんてされたら顔ごと吹き飛んでしまうだろう。
「ん? お前神崎のこと下の名前で呼んでるのか?」
あいつの下の名前なんて、俺でさえつい最近知ったって言うのに。そんなに仲がよかっのか?
『なんでって、とうじがそうよんでたじゃない』
「何言ってんだ、俺が碧の事を碧って呼ぶわけが……」
……ん、俺は今なんて言った?
またあの感覚に襲われる。何か大切な事を忘れているような。大事なカケラが抜け落ちているような、そんな感覚に。
『……だいじょうぶ? かおいろ、わるいわよ?』
「……いや、大丈夫だ」
『とうじってよくかおいろがわるくなふわよね。あおいとはなしてるときなんて、むかしからまっさおだもの』
……むかしから?
おかしい。俺が神崎とまともに話し始めたのはつい最近だ。
いや違う。俺は碧とであって、それがきっかけでありすを召喚して……。
視界がふらつき、脚がもつれ両膝が地面につく。
『とうじ、とうじ!』
おかしい、どこかおかしい。ありすじゃなく、俺自身が。
意識が、遠のいていく。




