第八十二話 釣り堀 その二
釣りを始めてから30分程経過した。俺と勇気は数匹釣り上げることができたが、女性陣はなかなか釣れていない。
「冬至、突然ですが私と結婚したくなりましたか?」
「本当に突然だな、なるわけないだろ」
肘関節を決められたり、ジェットコースターから落とされたりと、恋心が生まれるどころか、恐怖心が芽生えそうだ。
「しかたありませんね、そろそろ本気をだしますわ」
そう言うと、神崎は鯉に食べられているヒヨコに近づいた。
「ヒヨコさん、その魚いただいてよろしいですか?」
『ピヨっ!』
ヒヨコから魚を受け取ると、バックからプラスチック製のまな板と布に包まれた包丁を取り出した。
「おい、ちょっとまて、まさかお前鯉を捌くつもりか?」
「はい、何か問題でも?」
「いや、そこの看板におもいっきり『釣った魚はリリースしてください』ってかいてあるぞ?」
ただでさえ遊園地に設置されてある釣り堀だ、魚を食べる想定はされていないはずだが……。
「大丈夫です。許可はとってありますわ」
「よく取れたな許可⁉︎ っていうかここで捌くのか⁉︎」
「ふふん、やっと私の花嫁修行の成果を見せられますね」
「いや、流石にまずいだろ、子供もいるんだから。 おい勇気、一緒に止めてくれ!」
ヒヨコを餌に釣りを続けている悪友に助けを求める。こんな奇怪奇天烈な行動を許すわけには……。
「鯉を食べるなんて初めてだよ、僕鯉こくを食べてみたい」
「くそっ、そういえばこいつはバカなんだった……⁉︎」
「鯉こく……ですか。味噌がありませんわね。店主、味噌はありますか?」
「居酒屋じゃないんだぞ! 店主って呼ぶな!」
「もってきましたお嬢様」
「もってくるんじゃねぇ! おい、ポケットから紙幣はみ出しているぞ、買収されたな⁉︎」
くそっ、こいつといるとペースが乱される。厄介ごとはこのバカだけで十分だってのに……!
だが、不思議と嫌悪感はなかった。までもこんな体験をしてきたような、そんな感覚を覚えた。俺と神崎は今まで関わりがなかったはずなのに。




