第八十一話 釣り堀
「ほー、釣り堀か」
神崎に肘関節を決められながら歩いていると、珍しい施設が目に入った。
「次はここにしますか?」
「……そうだな、ここにしよう」
遊園地に来てまで釣りは…… とも思ったが、ジェットコースターのようなハプニングが起こりにくく時間も潰せる。一石二鳥とはこのことだろう。
適当に時間を潰して、夕方付近になったら『もう暗くなるし帰るか』と提案して帰宅するとしよう。
「勇気と好実もここでいいだろ?」
2人に向けそう聞くと、皇は顔を引き攣った。
「うっ、魚ってピチピチ跳ねるから苦手なのよね……」
「大丈夫だ、勇気もよくピチピチ跳ねてるだろ? それと同じようなもんだ」
「あ、なら大丈夫かも」
「大丈なわけないよね? っていうか、そのピチピチ痙攣しているのって、だいたい君達2人が僕を囮なりなんなりに酷使している時だからね?」
店のカウンターで説明を受け、釣竿と餌を受け取った。。
海や川で使用するようなリール付きの竿ではなく、竿の先端に釣り糸がつけられており、その糸の先に釣り針が括りつけてある。
餌は鯉の餌を水でふやかしたもので、粘土のように好きな形に変形できる。
『……お客様、申し訳ありません。餌のストックがなくなってしまいしまて、少々お待ちいただけますか?』
『大丈夫です。僕にはこいつがいますから』
『ピヨっ!』
『は、はぁ。……………お客様、どうして釣り糸にヒヨコを引っ掛けているのですか? そもそもどうしてヒヨコがここに……?』
「……なるほど、すぐリリースできるように針に返しを付けてないのか」
「勇気さんを放っておいて良いのですか? 定員さんに迷惑を掛けているようですけど……」
「あいつの奇行にいちいち対応していると日が暮れちまうからな、俺は放っておくようにしてる」
「……2人は本当に友達なのですか?」
「あぁ、友達だ」
利用価値があるうちはな。
「あらよっと」
餌をつけた針が、釣り堀に『ぽちゃん』と落ち、波紋が発生する。
「よいしょっと」
糸を括り付けられたヒヨコが、釣り堀に『ぼちゃん』と落ち大きな波紋が発生する。
数秒後に、最初の当たりが訪れた。
「よし、まずは僕が1ポイントだね」
勇気は大きめの鯉を釣り上げた。
なかなか重量なのか、釣竿が大きく弧を描いていた。
「おー、なかなか良いサイズじゃないか」
「うん、やっぱり生き餌は食い付きが違うね」
『ピヨっ!』
鯉に下半身を食べられながら、ヒヨコは勝ち誇った表情で手羽先を掲げた。
「……あんた達、召喚獣をなんだと思ってるの?」
「魚の餌だろ?」
「冬至、それは流石にヒヨコに失礼だよ、今回はたまたま餌の役をやっているだけなんだから」
「『餌の役』がやってくる召喚獣っていったい……」
頭を抱える好実、そういえばこいつは名家の出だから、召喚獣に対しての認識が俺たちのような一般人とは違うのだろう。
「きゃっ、ピチピチ跳ねて怖いですわ。手を握ってください」
「嘘つくな、さっき頭を鷲掴みしてただろ」
本当に魚を怖がっていた子供の代わりに針を外していた。お嬢様の割には豪胆だなと感心したばかりだ。




