第八十話 ジェットコースター
「冬至、これに乗りましょう!」
神崎は、佐野アミューズメントパークの顔と名高いジェットコースター『佐野ジェット』を楽しそうな顔で指差した。
最高速度205キロ、合計3度も回転する絶叫マシン。
あまりの怖さに一度乗ると、他のジェットコースターでは満足出来なくなると聞いたことがある。
別に、絶叫系が嫌いというわけではないが……。
「なんだ、その……。捲れるんじゃないか?」
こいつの格好はワンピースを身に纏っただけだ、色々と危なそうだが……。
「あら、私のワンピースの中が気になるのですか?」
「いや、微塵も」
「………」
すらっとした手が俺の顔目掛けて飛んできた。……って、え?
「ぐわぁぁ! 顔面が陥没するように痛てぇ!」
「さ、行きますわよ」
顔面を掴まれたまま引き摺られるようにジェットコースターの列に引き摺られていった。
『うっ、これにのるのね……』
『好実はジェットコースターは嫌いなの?』
『き、嫌いじゃないわよ! ただ、その…… 風圧ではだけちゃうって思っただけよ!』
『ははっ、確かにね、凹凸が少ないから支えがな……。ごめん好実、手を離してくれないかな、安全バーを降ろさないと流石に死んじゃうと思うんだ』
「勇気さん達も乗るそうですわね、勇気さんもはしゃいでますわ」
「いや、あれは前線に行くことを躊躇ってる歩兵のように命乞いをしているだけだぞ。 ……ちょっとまて、お前今俺の安全バーに何をした?」
「何もしてないです」
『それでは発進します。 世界最高峰の速度を楽しんできてください♪』
ジョットコースターが発進し、どんどんと加速する。
目もまともに開けられないほどの風圧が顔を襲う。しかし嫌悪感はない。この感覚がジェットコースターの醍醐味だと思う。
そして風に乗せられ宙を舞う1本の鉄の棒。
……鉄の棒?
「ぐわぁぁぁ! 安全バーが吹き飛びやがった!」
「冬至、怖かったら私の手を握ってもいいですわよ、握ってないと落ちますわ」
「てめぇ細工しやがったな!」
くそっ! 妙な動きをしていると思ってはいたが、目の前のことに集中しすぎて気が回らなかった……!
風圧に耐えるための支えを探してか、無意識に掴めそうな箇所に手を伸ばしていた。
「きゃっ、どこを触っていますの、えっち!」
「お前のせいだろ! くそっ、ありす、起きろ!」
胸ポケットで寝ている召喚獣を呼び起こす、危機的状況だがこいつがいればなんとかなるだ……。
『むにゃむにゃ、とうじったら、ぴーまんがきらいなんだから……』
「だー! くそ、どうすりゃいいんだ!」
くっ、非常に遺憾だが、後ろ座席に遺憾だが、後ろ座席にいるバカの手を借りるしかねぇ!
「冬至、助けて! ヘルプミー!」
後方を見ると、俺と同じく落ちる寸前の勇気がなんとかバー部にしがみついていた。
「くそっ、なんて使えない奴なんだ……!」
考えろ、考えるんだ俺……。 この状況を打破する方法を……!
「冬至どうしよう!」
「仕方ない、クッションを利用して衝撃を和らげるか」
「おい、そのクッションって僕のことだろ! 貴様も男らしく落ちろ!」
「このバカ! 俺の足をつかむな!」
こいつ……! 自分は助からないと踏んで俺を道連れにするつもりだな……‼︎
「「ぎゃぁぁぁ!」」
一回転するジェットコースター。頂上付近で重力に耐えることができなくなり、2人もろとも直下してしまった。
「……お前のヒヨコ、空飛べるようになったんだな」
「……僕も今知ったよ」
懸命に羽を上下に振るヒヨコのおかげで、なんとか難をのがれるこたができあ。




