第七十九話 デート その1
土曜日の朝、気持ちが良いほどの晴天。
神への祈りも届かず、無事今日を迎えてしまった。
佐野アミューズメントパーク、通称サミュ。
ただでさえ遊園地は苦手なのに、もう一つの懸念点によりさらに気分が落ちこむ。
そんなことを考えていると、周囲の視線を集めながら、1人の少女がこちらに走ってきた。
その少女は単純なデザインのワンピースを身につけ、麦わら帽子を被っている。容姿も合わさり周りからさぞ魅力的に見えているだろう。
……周りからは、な。
「ごめんなさい、準備に手間取ってしまいました。 待ちました?」
「めちゃめちゃ待った」
「では行きましょうか♪」
楽しそうに笑いながら、彼女は微笑みを見せた。
お土産通りを歩いていると、ふと疑問が頭をよぎった。
「おい、一つ聞いていいか?」
「どうしました? もうお土産を買いたいのですか?」
「どうでもいい、いや、佳奈が欲しいグッズがあると言っていたから寄る予定だが…… 女を寄り付けないように偽の彼女を作るっていうのは…… まぁいい。あのバカが考えたにしては筋が通っているしな。だが学校から遠い遊園地なんかにきても生徒に見られないんじゃないか?」
学校の生徒に見られないんじゃ、『斎藤冬至には彼女がいるため告白しても意味がない』という認識を学校内に広めることができない。どうしてこいつはこの遊園地を選んだんだ?
「他に目的があるからです」
「目的? それはなんだ」
「まぁ、それは後で教えますわ、それにちゃんと噂は広まるよう手は打ってありますわ」
そう言うと、右手の人差し指をグッズ売り場に伸ばした。
『今女性店員さんの胸見てなかった?』
『あはは、見るわけないじゃないか、僕は紳士だからね、そんな失礼な事はしないよ』
『………』
『そんな目で見ないでよ好実、怖くて全身が武者震いしてきたじゃないか』
『………ねぇ、このマグカップの大きさってどのくらいかしら』
『Dカップじゃないか…… 違うんだ、聞いて欲しい。胸元が空いているシャツを着ていたから仕方ないと思うんだ。男だったら見ない人なんていないはずだよ。だから振り上げたマグカップを振り下ろさないでほしぐべらぁぁ!』
「あの2人にお願いしているから大丈夫ですわ」
「……今2人が1人になったけどな」
くそっ、余計なバカまでついてきてるのは……⁉︎
そもそも、神崎と恋人関係だと広まれまば、妬み嫉み僻みにより現在よりも酷い状況になる事は目に見えている。
だとしたら、行うべき事は一つだ。
「いま逃げようとしませんでした?」
「くそっ、肘関節を掴まれて離れられねぇ! しかも力が強ぇ⁉︎」
指が肉に食い込んでいる、なんて力だ……⁉︎
神崎が笑顔で俺に振り向く、だが目は全く笑っていない。
「もし次怪しい動きをしたら……」
「……したら?」
「折ります」
俺は逃げることを諦めた。




