第七十八話 強行手段
「私とデートしましょう」
学校のマドンナであり、女性なら誰しも妬むほどの美貌を備え、名実ともに最強格の召喚士である神崎さんからの言葉。
もちろん、学校の男なら間違いなく二つ返事で了承を得ることができるだろう。
流石の冬至でも、断ることなんでできないはず……
「断る」
僕はこいつを舐めていたようだ。
「ど、どうしてさ冬至⁉︎、神崎さんからのお誘いだよ⁉︎ お前みたいなブサイクにはこの瞬間しか女性と付き合える機会なんてないのに!」
このブサイク、女性との絡みがなさすぎて彼女の魅了が分かってないのか……⁉︎
「斉藤、本当に断っちゃっていいの?」
冬至は大きく深呼吸をし、腕を組みながら口を開いた。
「こいつとデートなんで周りからの視線が痛いだけだろ、一様はカップルに見えていたようだし、佳奈にもう一度頼むことにする」
「こいつ……! 神崎さん少し待っててね、引き摺り回してでも連れて行くから!」
冬至に取っ組みかかる僕。大丈夫、頭を二、三回電柱に叩きつければ治るはずだ、
「私とデートはしたくないのですね」
神崎さんはお誘いを断られたにも関わらず、冷静な口調でそう言った。
「あぁ、空回りさせて悪かっ」
「冷蔵庫3段目の左端」
突然妙なことを言う神崎さん。
「車のエンジンの横、送風機のフィルターの裏」
次々と特定の場所を告げる神崎さん。
「冬至どうしたの? ライオンに見つかった草食動物みたいな顔をして」
「落ち着くんだ俺、こいつがアレの在処を知っているわけが」
「経済の教科に扮した」
「ぐあぁぁ! なんで知っているんだ! バレないようありとあらゆるバレなそうな場所に保管してるっつうのに!」
エンジンの横に経済の教科書……。
「あぁ、なんだ、冬至が隠してるエロ本のことだね」
そういえば、所有していることがバレたら命に関わるからって色んなところに隠してるって言ってたっけ。
「デートに行かないのなら全て燃やします。行くのなら幼馴染本だけは残して全て燃やします」
………あれ? どちらにせよ燃やされるような?
「宝物を人質に取るとは、見た目によらず卑怯な手を使ってるんじゃねぇか」
焦っているのか、ほぼ全ての本が燃やされることに気づいてない冬至。
まぁこいつのコレクションがどうなろうと僕は知ったこっちゃないけど。
「恋愛に手を抜くなと母様から口酸っぱく言われていますから」
ニコッと可愛らしく笑う神崎さんと苦虫を噛み締めたような表情の冬至。……なんというか、側から見るとすごくお似合いのような気もする。
「……ベットシーツの裏、本棚の段差、国語の教科書」
「やめて好実! 対抗心を燃やして僕のトップシークレットの場所を口に出さないで!」
「そうね、燃やすことにするわ」
「くそっ、僕にも飛び火が……! 冬至、貴様の管理能力が低いせいだぞ!」
「うるせぇ! 人の不幸を笑ってるから天罰が降ったんだろ!」
「なんだと、このアホ!」
「んだと、このバカ!」
このやろう、今日こそ生まれてきたことを後悔させてやる!
「ねぇ、神崎さん、相談があるんだけど……」
「何でしょうか?
「私たちも…………していい?」
「はい、もちろんいいですよ」




