番外編 生徒会執行部 その2
「……なぜ生徒会室に羊と犬が? っていうか、どうして羊にまたがっているのですか?」
「ふふっ、君はおかしな事を聞きますね」
武副会長は笑みを浮かべ、さぞ当たり前かのように返答した。
「羊がいたら跨るのが礼儀ではありませんか」
「そんな礼儀初めて聞きましたよ!」
思わず声を荒げてしまう私。
想像も言動の数々に、私の脳が処理しきれていない……!
「新入部員に特殊な事を見せないでください。すぐに退部してしまいますよ?」
「特殊な事だなんて……。 会長のおっぱいに平さに比べたら些細な事ですよ」
会長のこめかみから、ピキっと何かが弾ける音が聞こえた。
「いえいえ、武さんの奇行に比べたら些細なことです」
「ははっ、御謙遜を、でもそこが会長の魅力ですよ?」
「武さん、表にでてください」
顔は笑っているが、隠しきれてない殺気が溢れ出している。
「申し遅れました。私は生徒会副会長に勤めている、武白と申します。 そしてこの2体は私の召喚獣です。煌びやかな毛を靡かせているのがシルフ。警戒心を露わにし、私を守護しているのはノームです」
『わんわん!』
チワワめっちゃ吠えとる……。
「どうだった、初出勤は⁉︎」
翌日の朝、親友の雪子が少し興奮した様子で私の席にやってきた。
……私も同じテンションだったなぁ。昨日の朝までは。
「動物園だった」
「動物園? 生徒会メンバーと行ったの?」
「いや、生徒会室にいった」
「……ごめん薺、よく分からないんだけど」
「大丈夫よ、私もよく分かってないから」
はぁ、とため息を付き机に突っ伏す私。
想像していた生徒会と全然違ってた。
……武副会長が、ちょっと特殊な人だったなんて。
あの先輩と一年以上一緒に活動すると考えると気が重くなる。
「失礼、生徒会書記の西野薺はいるか?」
「え、は、はい、私が西野です。 ……って、佐野さん⁉︎」
私の目の前に現れたその人は、よく知っている顔だった。
炎のような色の髪をワックスでピシッと固めていて、見た目は不良のように見えるけど、生徒に対しては情に熱く、後輩からの人気が高いらしい。
生徒会会計、佐野炎児先輩。
「炎児先輩⁉︎ ど、どうしてここにいるの⁉︎」
まるで街中で有名人を見つけたような驚き方をする雪子。
「どうしてって、西野に用事があるからだ。 いまから朝のミーティングなんだ、一緒に来てもらえるか?」
「は、はい! すぐ用意します! ごめん雪子、また後でね」
「炎児先輩、かっこいい…… しゅき」
雪子は頬を赤ながら、とろけたような目で佐野さんを見つめていた。
「すまんな、今日は参加予定じゃなかったんだが、俺が交渉して参加してもらうことにした」
廊下を歩きながら佐野さんがそう私に謝罪を入れた。
「いえ、すごく暇だったので問題ないです!」
「友人と話していなかったか?」
「どうでも良い話だったので大丈夫です!」
「そうか、あとで詫びの一つでも入れておくか……」
佐野さんは人差し指を顎に当て「どんな謝礼をいれるべきか……」と悩みやじめた。
「あの、一つ聞きたいことがあるのですが、よろしいですか?」
「ん、なんだ」
「予定では、今日のミーティングは免除だったんですよね? どうして交渉までして私を参加させるようにしたんですか?」
「あぁ、生徒会に早く馴染めるようにと思ってな、俺も入りたての頃は苦労したから、同じ道をたどって欲しくなかったんだ」
佐野さんは微笑みながら私の方に顔を向けた。
「ありがとうございます! 精一杯がんばります!」
「気負いすぎるなよ? 困ったことがあったらなんでも言ってくれ」
や、やさしい! 生徒達に人気の理由も分かる!
この先輩になら、なんでも相談できる!
私は心にしばりついていた気持ちを言葉にして吐き出した。
「あの、さっそく相談したいんですけど」
「おう、なんだ?」
「今朝、武副会長に会ったんです」
そこまで言うと、佐野さんは「はぁぁ」とため息をついた。
「……会ったか」
「……はい、会いました」
「……なんかすまんな」
再び謝罪をする佐野さん。
「俺があいつの相手をしているから安心してくれ、あいつを止めるのもおれの役目だからな」
「……おねがいします」
少し申し訳ないけど、私にアレの相手は難しいから大変ありがたい。
「まぁなんだ、他に気になるところはなかったか? なんでも言っていいぞ」
私は言葉に甘え、もう一つの気になる事を聞くことにした。
「武副会長って、新妻会長のことが好きなんですか?」
まだ少ししか会っていないけど、私の恋愛センサーがばっちりサイレンを鳴らしていた。武副会長は新妻会長に恋をしている。そんな気がする。
すると、佐野さんはビクッと体を震わせた。
「さ、さぁ、どうだろうな、俺には関係ないから……」
……ちょっとまって。
「佐野さん、もしかして新妻会長のことが?」
私がそう聞くと、さっきよりも大きく体を震わせた。
「キャァァァ! 佐野さんキャァァァァア!」
「う、うるさいぞ! 別になんとも思ってないんだからな!」
分かりやすく照れる佐野さん、すごく可愛い!
もうすでに恋の三角関係ができているなんて……! 生徒会での活動が楽しみになってきた!
「さぁ、今から恋の駆け引きですよ、気合い入れてください!」
「う、うるさい! さっさとはいるぞ!」
いつのまにか到着していた生徒会室の扉を、佐野さんは勢いよく開いた。
「どうですか? 犬小屋の入り心地は?」
「なかなか乙なものですね。強いて言うなら獣臭いです」
そしてそっと扉を閉じた。
「「………」」
「佐野さん、今檻の中にいた武先輩に、新妻会長が微笑みかけているように見えたのですが……」
「……気のせいじゃないか?」
昂っていた気持ちがすっと冷めた。




