二章 最終話 結末
「……いったい、きみは何をしているの?」
召喚士育成高等学校の屋上で、望遠鏡を片手にメモをとっている白髪のイケメンに、僕はそう声を投げかけた。
「何って、おっぱいマネジメントに決まっているじゃないですか」
なんだろう、その奇抜なマネジメントは。
「お、おっぱいマネジメント?」
「はい、高等学校すべての女性の胸のサイズを頭に入れ、そのおっぱいをマネジメントするのです。外資系企業へのおっぱいコンサルティングを行い、よりよい貧乳をブラッシュアップするため、私のこの作業を誇りに思い貧乳を確かめています」
どうしよう、何一つ情報を得ることができなかった。
「………つまり、下校中の高校生の胸のサイズを確認してメモしてるってこと?」
「そうとも言えますね」
「それってバレたら不味くない?」
「そうかもしれませんね」
「…………」
相変わらずのその度肝に、僕はどこか感心している。
すると彼は、僕にバックから取り出した望遠鏡を差し出してきた。
「ご一緒にマネジメントしてみませんか?」
「………(ごくり)」
「ねぇ、あの子の胸大きくない?」
「それよりもあの貧乳の方をご覧ください、なかなか良い地平線ですよ、今にも飛行機が着陸しそうです」
望遠鏡を覗きながらおっぱいトークで盛り上がる僕と白君。
性欲とかじゃなく、ただ純粋な好奇心に駆り立てられ、僕も一緒にマネジメントすることにした。
「う、うわ! す、すごい! 白君! あの子の胸をブラッシュアップしない?」
「……たしかにすごいお乳ですが、あれは見せかけのお乳です。よく見てください、胸の揺れが不自然すぎます」
「た、たしかに、ってことは、パットなのかな……」
「ええ、あれは間違いなくパットです」
なるほど、不自然な揺れ乳はパットなのか、勉強になった。
「お前たち、何をやっているんだ?」
ゴミ屑を見る目を僕たちに向ける冬至。
「何って、おっぱいマネジメントだよ」
「……お前は何を言っているんだ?」
「おっぱいをマネジメントして企業にブラッシュアップしようとしているのです」
「……お前らは何を言っているんだ?」
さっきと全く同じ反応が返ってきた。
僕たちを観察するように、ジーと見つめる当時
「……ふん、また、リスクとリターンが釣り合ってないバカなことをしているんだな」
堂々と悪態をつく冬至。
むむっ、こいつだってつい最近まで僕と一緒にグラビア雑誌買い漁っていたのに……。
「あ、そっか、冬至にはフィアンセがいるから、興味も関心もなくなったんだね」
「……それはどういつ意味だ?」
「だって、もう結婚して相手は決まっているから、他の女性に興味がないんでしょ?」
「な、なんだと!」
「じゃぁ、どうして女性に興味がないって言うのさ、女性には胸がついているんだよ? その魅力が分からなくなっている今の冬至は、牙を抜かれた獣だよ」
「ぐっ、言ってくれるじゃねーか……⁉︎」
冬至は僕たちを指差し、そして高らかに宣言した。
「分かった、この俺が最高の胸を持ち主を探してやる」
全く、アホは乗せさせやすくて助かる。
10分間ほど、3人でバストウォッチングをしていると、隣で望遠鏡を覗いていた冬至が嬉しそうな声をあげた。
「おい、あの校門に寄りかかっている女はどうだ? でかい乳しているぞ」
……確かに、大きい胸を持っている。
だけど……。
「……あの人、冬至のおばあちゃんじゃない?」
「………」
すごく苦しそうな顔をする冬至、まぁ、そうなるよね。学園長である自身のおばあちゃんの胸を友達と後輩に紹介したんだ。 こんなに苦しいことはない。
突然、隣から歓喜の声が聞こえていた。
「あ⁉︎ ………見つけました、最高の貧乳を、いえ、あの胸は一切の膨らみが存在していないので、貧乳ではなくありません。一筋の線、地平線です!」
「ぼ、僕も見つけたよ、な、なんなんだあの不自然すぎる胸の揺れは……! 間違いないとんでもなく大きいパットを付けているんだ、自身の貧乳を隠すように、揺れない胸を無理やり揺らすように……!」
「「よし、ブラッシュアップだ!」」
「いえ、ブラッシュアップの必要はありせんよ?」
突然、何者かの素手によって、白君の望遠鏡が握り潰された。
「あ、会長、その貧乳、僕と共にブラッシュアップしませんか?」
笑顔を崩さず、粉砕された望遠鏡を片手に持っている新妻さんに向けて提案する白君。
相変わらず、その曲げることをしらない意思には感服する。
……新妻さんの意識が白君に向いているうちに退散しよう。
新妻さんがいるという事は、おそらくあの2人も近くにいるに違いない。
「あら、どこに行こうとしているの?」
後ろから、ものすごい力で頭を鷲掴みされた。
「……あ、あの、普通こういう場面の時って、襟とか手とかを掴むよね? どうして頭を鷲掴みにするんだい?」
「握り潰すためよ」
「…………」
「……あんたたちが貧乳貧乳って言うから付けてきたっていうのに…… もう、本当に可愛いだから……!」
「や、やばい! これ僕助からないかもしれない! 冬至! ヘルプ、ヘルプミ!」
助けを求めるように冬至の方向に振り返ると、そこには……。
「はい、冬至、散歩に行きますわよ」
「……俺は、無力だ……」
半裸で四つん這いになり、そして首には可愛い犬用の首輪をつけている冬至が、背中に恋人(仮)を乗せ、とことこと歩いていた。
「もう、ダメですわよ、やっと奉仕活動が終わりましたのに、また問題になりそうなことをしては、メッ!」
可愛い掛け声と共に振り下ろされる綺麗で華麗な右手。
バチィィン!
「うぎゃぁぁ!!」
でも、威力は可愛くないようだ。
自然教室で行われた戦闘実習は、僕が最後の1人となり終了した。
拍手喝采で迎えられると思っていたけど、待っていたのは教師陣の燃えたぎった説教だった。
戦闘訓練はあくまでも訓練。身体をへの攻撃は禁止だったらしい。
一様、優勝として扱ってはくれたけど、僕と冬至、そして白君は高等学校での奉仕活動が言い渡されてしまった。
だけど、その奉仕活動も今日が最終日。
これで、羽を伸ばし放課後を楽しめる…… はずだったけど。
「白さん、どこへ逃げようとしているのですか?」
「勇気、あんた覚悟はできてるんでしょうね?」
「冬至、今日は校内を100周するまで帰れませんからね?」
どうやら、今日まではゆっくりできないようだ。
「「「ぎゃあああ!」」」
僕たちの悲鳴が、学校中に響き渡った。
二章最終話です。読んでくださった方、本当にありがとうございます。




