第七十話 勝利
『ピヨッ!』
二つの翼を大きく広げ、神々しく我が召喚獣が現れた。……ヒヨコだけれども。
「……いまさらヒヨコが1匹現れたところで、戦況が変化するとは思えません、やはり私の勝利に変わりはない」
笑みを浮かべる白君。
ヒヨコを呼ぶことならすぐできた。
ならなぜ、今の今まで戦いに参加させなかったのか、理由は単純明快だ。
「瞬間移動術は、召喚獣の魔力量に魔力消費量が依存している。つまり、魔力量の多いい召喚獣を瞬間移動させるには、莫大な魔力が必要になる。人間には不可能なほどのな」
冬至が立ち上がりながらそう説明する。
「……何が言いたいのです?」
「まぁ怖い顔せずに聞けよ。つまり、俺は自身の召喚獣をここまで移動させることはできない。どこかに飛んでいったからな」
「…………」
「どこにいるかも分からないからない召喚獣を探すことは困難だ。……魔力探知でもできない限りな」
「………⁉︎」
「だったら、話は単純だ」
「ノーム、シルフ! さがれ!」
白君は顔色を変え、召喚獣に指示をする。
ようやく状況を理解したようだ。
「魔力を探知できるやつに、連れてきてもらえばいい」
もう、遅いけど。
ヒヨコの背中に乗っている、桁違いの魔力量を有しているその召喚獣は、可愛らしい声をあげた。
『いくわよ! かいぜる!』
『ピヨッ!』
飛び立ったヒヨコは紫色の閃光になり、そして標的に衝突する。
「がっ、はっ⁉︎」
新生ヒヨコミサイルが、2体の召喚獣と1人の召喚士を貫いた。
「これが勝利ってやつだ、中坊」
気絶している白君に向け、そう言葉をこぼす冬至。
「しっかし、よく思いついたね」
さっきこいつが説明した通り、冬至はフェアリークイーンであるアリスに瞬間移動術を使うことできない。
そこで、こう僕に指示した。
『ヒヨコの瞬間移動に、アリスはただのりできるはずだ、ヒヨコをアリスの元に向かわせてくれ』
僕が魔力探知をし、ヒヨコがアリスと合流する。
その時間を僕と冬至で稼ぐ必要があったから、召喚獣なしで僕たちは戦闘をしていた。
「アリス、頼む』
『うん!』
アリスの治癒魔法で、冬至の傷がみるみるうちに塞がっていく。
「助かった」
『いいってことよ!』
ぎゅっと冬至にしがみつくアリス。
本当に冬至のことが好きなんだろう、可愛い子だなぁ。
「じゃぁ、悪いんだけど、僕にも治癒魔法をかけて……」
「いや、ちょっと待て」
僕の言葉を遮るように話し出す冬至。
「え? どうして?」
巨岩による攻撃を受けた僕の方が、冬至よりダメージが大きいはずなのに……。
「そのまえにやることがある」
そう言いながら、僕の背後に回る。
「……なっ! まさか!」
「バカが、ようやく気づいたか」
回避行動を取ろうとするが、長い腕で引き寄せられてしまう。
こ、こいつ! まさかこの場面で!
「お前はここでリタイヤだ」
裏切るなんて……!
「き、きさま! こんなことをして心は傷まないのか!」
首を両腕でがっちりホールドされ、逃げることができない……!
「はっ、何を言ってやがる、俺は最初からお前の隙を伺っていたんだぜ?」
く、くそう! この外道が!
「じゃあな勇気、俺が優勝だ」
ホールドしている腕に力を込める冬至。くそぅ、ここまでなのか……⁉︎
「……そうですか、友達を裏切ってでも優勝したいのですね」
冬至の顔面を、すらっとした美しい手が鷲掴みにした。
「………すまん、どうして顔を鷲掴みされているか分からないのかだが……」
「いえ、空いていたので」
「……それは理由になってない気がするんだか……」
「言い訳は後で聞きます。そんなにクッキーが食べたいなら、家に帰ってからたくさん食べさせてあげますわ。……文字通り死ぬほど」
「いや、俺は別にクッキーなんかどうでもぉぉぉ!! た、たすけろ勇気、俺たちは友達だろ! ぎゃぁぁぁ!! 頭が割れるように痛ぇ!」
鷲掴みされている頭から、ミシミシと骨が軋む音が聞こえてくる。
「清々しいほどの手のひら返しだね。僕は嫌いじゃないよ」
「うるせぇ! お前の好き嫌いはどうでといい! やはく助けぐふぅ!」
冬至は、恋人(不本意)の神崎さんに引きずられ、森の中に消えていった。
『最後の1人となりましたので、戦闘訓練を終了いたします。戦闘訓練参加者は第一グラウンドに……』
戦闘訓練終了のアナウンスが鳴り響いた。
『ピヨッ!』
ヒヨコは、グッと右手羽先を天高く掲げた。




