第六十九話 奥の手
犬と羊の連携魔法攻撃(土弾)が僕めがけて発車される。
時速120キロは出でいるであろうその土弾を、僕ら唯一の取り柄である反射神経を存分に発揮し、なんとか避ける。
「ぐっ!」
僕の体力は無尽蔵ではない、だんだんと動きが悪くなっていってるのを感じる。
だけどそれは相手も同じだ。今はまだ余力を見せているけど、そのうち魔力切れという限界が来るはずだ。
10位以内に入ったから、奉仕活動を逃れるという目的は達成した。だけど残り5人まで生き残ったんだ。優勝したいって欲を抑えることはできない!
『ウー、ワン!』
直径で、僕の身長をゆうに超える土の塊を生成するワンコ。
全ての魔力をその土の塊に注ぎ込んだのか、ハァハァと息を荒げながらストンとおすわりをした。
羊の風魔法によって発射された土弾見つめ、大きく深呼吸する。
覚悟を決め、顔を上げたその時。
体が動かなかくなった。
「なっ、どうして……⁉︎」
なんとか体を動かそうと全身に力を込めるが、ピクリとも動くとこができない。
「拘束の魔法です。人間である私が使える程度の魔法ですので、威力はたかが知れていますが、疲れているあなたを拘束するには十分でしょう」
冬至の攻撃をあしらいながら、冷静にそう言う白君。
「くっそぉ!」
直径2メートルはあろう巨岩が、僕に命中した。
「ぐっ、いっつ⁉︎」
目が覚めると、僕は木に寄りかかる形で倒れていた。
全身が焼けるように痛い。まともに体を動かすことはできなさそうだ。
「ぐっ……!」
すぐ隣には、冬至が苦渋の声を漏らしていた。
全身ボロボロで、片膝を地面につけながら白君と向かい合っている。
「……召喚獣相手に生身でよく戦うものですね。想像以上です。これが先輩の意地、というものなのでしょうか」
召喚獣を両脇に従えながら、冬至を見下ろす白君。
「……あなたたちは私の長年の計画を崩す可能性があります。悪いですが、しばらくは病院で大人しくしていただくことにしましょう」
召喚獣が、魔力を一点に集中し始める。
「私と戦闘することになった自身の運がなかったと割り切ってください」
犬は魔力でぎゅっと硬くなった土の塊を生成し、羊が風を発生させる。
「私の勝利です」
……『勝利です』、か。
「中坊、お前、勘違いしているぞ」
冬至がニヤリと笑った。
「……どういうことですか?」
解いていた警戒心を再び露わにする白君。
「お前は今、『勝利です』と言ったな。それは違うな。いいか、よく聞け?」
冬至は、一息溜めてからゆっくりと口を開いた。
「勝利って言葉は、勝利した後に言うもんだ」
「勇気!」
「おうよ!」
魔力を集中させ、使い慣れた魔法を発動する。
「こい、ヒヨコ!」




