第六十八話 VSシルフ&ノーム
肉を断つことに特化した鋭い牙。
集音器の役割を担っている広い耳。
そして…… とても見覚えのあるかわいいフォルム。
『ヴー! ワンワン! ワン!』
「……ねぇ、白君」
「どうされました?」
「これ、犬じゃないの?」
「違います、土の精霊ノームです」
「ニックネームは?」
「ポチです」
「やっぱり犬だよね⁉︎」
羊と犬を従えている白君の姿は、羊飼いそのものだった。
「召喚獣が羊や犬だなんて…… 君は召喚士を舐めているのか!」
「……それはお前が一番言ってはいけない言葉だろ」
冗談はさておき、状況はさらに苦しい展開になってしまった。
相手は召喚士1人と召喚獣2体、それに比べ、こちらの戦力は召喚士2人のみ。
召喚獣がいないこの状況では、有効打を与えることは難しい。
とりあえず逃げることに専念するんだ、あと5分。……いや、2分耐え忍べば、からなず反撃のチャンスは訪れる……!
「ふん、残念だったな中坊、こちら陣営にも犬はいる。逃げ腰の雑魚だがな」
「……ねぇ、それって僕のことじゃないよね?」
「勇気、作戦Bだ」
「⁉︎(フルフル)」
「そんなイヤイヤ顔を横に振りながら涙目になるな、殴りたくなるだろうが」
「鬼! 貴様は世界中どの生物よりも残酷な生き物だ!」
「よく聞けコタロウ」
「やめて! 犬の名前みたいな呼び方しないで!」
「役割分担だ、俺はあの中坊の相手をする、お前は他を頼む」
「まぁ、平等に相手するなら…… ってちょっとまって! その作戦僕の負担重すぎない⁉︎」
言い方を濁しているだけで、結局僕が召喚獣を相手することになるじゃないか!
「やるぞ!」
「あーもう! やってやる!」
拳をグッと握り気合を入れる。
確かに、召喚獣の相手をするなら僕の方が適役だ。攻撃の一つ一つが致命傷になる以上、体が小さくてすばしっこい僕の方が攻撃を避けやすい。
「シルフ、ノーム! 連携攻撃です!」
『メェエエエ』
『ワンワン!』
ノームが魔法で生成した硬そうな土の塊を、シルフの風魔法で広範囲に飛ばしてきた。
「ぐっ⁉︎」
ドン、という重い音と共に、右太ももに鈍痛が走る。
転びそうになるが、左足を一歩前に突きだし踏ん張る。今転倒してしまっては次の攻撃が避けられない……!
「オラオラオラ!」
「ぐっ、ムエタイですか。なかなか良い動きです!」
すこし離れた場所で冬至と白君が肉弾戦を始めていた。
……あのアホはケンカっばやくて、戦闘経験豊富なはずなのに、一回り小さい白君に苦戦を強いられている。
これが名家、ってやつなんだろうか。召喚獣はふざけているけど、実力は確かなものだ。
パン! っと両腿を叩き気合を入れ直す。あと1分。なんとしても耐え忍んでみせる!




