第六十六話 伏兵
魔力をほぼ全て使っての攻防。
ワイバーンは炎ブレス吐き、グリフォンは風のシールドで守る。
ワイバーンは風のシールドごと燃やし尽くせば勝ち、グリフォンは炎ブレスを防ぎ切れば勝ち、言葉で表せば至極単純だ。
だけど、本人たちからすれば、緻密な魔力操作を要求されているため、そう単純ではないだろう。
『ガッ!!!』
『クルルァ!』
周囲の草木が焦げ、脆くなり、風に飛ばされて消えてしまう。
50m以上離れている僕も、あまりの熱気に汗が全身から溢れてくる。
本来の召喚士同士の戦いは、こんなに迫力のある戦闘だったのか……。普段はヒヨコの戦闘、というかお遊戯しか見ていなかったから、温度差が激しい。
「「はぁあああ!!」」
2人が雄叫びを上げると同時に、大爆発が起きた。
木が吹き飛ぶほどの衝撃波が発生した。
砂埃が邪魔で見えない……!
そして、だんだんと砂埃が収まり、視界が安定してきた。
『ガッ……』
『ク、クルル』
グリフォンとワイバーン、どちらも倒れていなかった。
だけど、どちらも体力を消耗しているのか、フラフラと右往左往に体を揺らしている。
「ワイバーン!」
『………!』
先に動いたのはワイバーン。新妻さんの掛け声と共に猛スピードでグリフォンに迫る。
「よ、よけて!」
『ク、クルル』
立つことで精一杯なのか、なかなか動くことができないグリフォン。
だめだ、このままだと……!
『ガッ!!』
ワイバーン渾身の突進が、グリフォンに炸裂した。
グリフォンは吹き飛ばされ、そして倒れた。
「私の勝ちです」
新妻さんは、ストンと座り込んでしまった好実を眺めながら、そう勝利宣言をした。
……まだ戦闘は終わっていないっていうのに。
『ガッ……!!』
ワイバーンはうめき声らしき鳴き声をあげた。
「な、なんですか、この召喚獣は!」
ワイバーンに巻き付いているそれを見て、驚く新妻さん。
そう、好実の召喚獣は一体ではない。
「ヘビの召喚獣ベロニカよ、幻影魔法が得意で、今の今までグリフォンの首に巻き付いてあったバンダナに魔法を使って化けていたの」
やがて、締め付けに耐えられなくなったのか、舞っていたワイバーンが地面に落ちた。
「この勝負、私の勝ちね」
こうして、歴代最高の攻防と称されるようになる戦闘は、幕を閉じた。
「……今回は私の負けです。ですが次は必ず私が勝って、勇気先輩を愛犬のジュマンジと同じ檻に入れてみせます」
そんな恐ろしい事を言いながら、彼女は戦闘訓練範囲外に歩いて行った。
『残り5名となりました』
アナウンスが響き渡った。
あと5人ってことは、ここにいる僕、冬至、好実の他に2人いるってことになる。
もう戦闘実習が開始してから40分以上時間が経っている。5分に1度僕たち高校生の居場所は中学生たちに伝わるから、もうすでに8回も居場所が割れていることになる。
これほど時間が経って中学生達は戦闘を仕掛けてこないということは、僕たちに近づくつもりがないということだ。
「これからどうする? 僕たちから攻めにいく?」
「そうだな、攻めたいところなんだが。 ……勇気、耳をかせ」
「ふぇ? まぁいいけど」
ごにょごにょ。
「どうだ、できそうか?」
「うーん、まぁやってみるよ」
「……2人で何話しているかは知らないけど、魔力を探知して、残り2人の居場所を割り当てるわよ」
好実が、ベロニカを1メートルほど離れた前方に移動させ、魔力探知を始めようとしたその時。
ベロニカが、吹き飛んだ。
「な、べ、ベロニカ⁉︎」
突然の出来事に取り乱す好実。
気絶しているのか、全く動かないベロニカ。
ベロニカの元いた位置に視線を向ける。そこには、見知った召喚獣と召喚士がいた。
「悪いですが、会長のクッキーは私の物です。3人とも、ここで脱落していただきます」
『メェエエエ』




