第六十四話 グリフォンVSワイバーン その①
「私が求めているもの……。それはおバカなのです」
まさか、こんな面と向かって、中等部の生徒会長にバカと言われるとは思わなかった。
「そして、昨日、高橋先輩の顔を見た時、私は確信しました。私の心を埋めることができるおバカは、高橋先輩だけなのだと」
そんな事を確信して欲しくなかった。
「で、でもさ、さっき川に捨ててきた白君も相当なおバカじゃないの?」
新妻さんが、おバカな子が好きだっていうことは充分分かった。
だっから、羊を馬のように乗りこなしながら警棒をブンブン振り回していた白君も、相当な実力者なはずなんだけど……。
「たしかに、先程全身の関節を外して川に捨ててきた白君も、かなりの素質を持っています。ですが、高橋先輩と比べたら霞んで見えなくなるほどです。高橋先輩、自信を持ってください、先輩は世界一です」
いったいどの部分に自信を持てばいいんだろうか。
「よかったな勇気、珍しく褒められているじゃないか」
「違うよね? ものすごい勢いで罵倒されているだけだよね?」
「わ、私だって、勇気のことはものすごくバカだって、ずっと前から知っていたんだから!」
「それ擁護にもなんにもなってないよ! みんなは僕をどうしたいの! 僕のことが嫌いなの⁉︎」
どうして僕は、戦闘訓練中にこんなにも罵倒されなければならないのだろうか……。
「さぁ、戦闘を始めましょう。皇好実先輩。……いや、可井日向先輩……‼︎」
「なっ!」
新妻さんは知っているんだ、学園長に頼んで隠蔽していた。好実の過去を……!
「私が勝利した場合、高橋先輩をもっとおバカにするため、犬小屋に閉じ込めます」
いくらおバカな人が好きだからと言っても、他の手段を思いつかなかったのだろうか。
「好実先輩は、どうされますか?」
ふん、と胸を張る新妻さん。
……なんというか、何がとは言わないけれど、やっぱり好実方が小さい気がする。やはり彼女は世界一だ。
「……じゃあ、私が勝利した場合は、勇気を犬小屋に閉じ込めたあと、崖から突き落として川に流して、また犬小屋に閉じ込めるわ」
まずい、邪な事を考えていたことがバレている……⁉︎
「決まりですね」
「あ、あの、このままだと、2人のうちどちらが勝っても、僕は不幸にしかならないんだけど……」
「大丈夫ですよ、寂しくないように愛犬も一緒に入れますから♪」
「大丈夫よ、私が勝っても負けても処刑はするから」
ああ、なるほど。
今日僕は死ぬことは確定しているんだ。
「力を貸してください、ワイバーン」
新妻さんの肩に乗っていた銀色の鱗に覆われた小竜が、新妻さんの周りをくるくると飛び回り始めた。
「……グリフォン」
好実のすぐ隣に、2メートルはあろう巨体が突如現れた。瞬間移動術を発動させたんだろう。
急に、2人の雰囲気が変わった。召喚士同士の闘いの時の緊張感が周囲を包み込む。
「「はぁあああ!」」
グリフォンの風魔法と、ワイバーンの炎ブレスが衝突し、小さな衝撃波が森を揺らした。




