第六十一話 強き意思
「うぅ、……さすが会長、良いビンタですね」
新妻さんのビンタで吹き飛ばされた白君は、よろけながらそう言った。
細身な体とは裏腹に、結構タフなんだなぁ。
「……ほら、見た事ありますか? これほどの平らな胸を」
新妻さんを指差しながらそう呟く白君。
本当の怖いもの知らずを、僕は初めて見た気がした。
そう思うと同時に、なんというか、対抗心が芽生えてしまった。
「ふん、僕だって、飛行機が着陸できそうなくらい平らな胸を知っているよ。……あれ? どうして急に視界が真っ暗に?」
「ねぇ、それって誰のことかしら」
「ぎゃぁぁぁ、頭が割れるように痛いいい!」
好実に頭を鷲掴みにされる僕、あまりの握力に骨が軋む音が聞こえてくる。
「ふむ、確かに、そこのレディも良い地平線『ガコンッ』をお持ちですね。しかし、その先のアガルタが見えない、その点を踏まえれば、やはり会長の地平線の方が『ガコンッ』優れていると言えます」
好実と新妻さんに両腕の関節を外されながら持論を語るその強き意思に、僕がどこか感動してしまった。
って、好実が子供が一瞬で泣き出しそうなほど恐ろしい形相をしている……! ここは、フォローの一つでもして気を紛らわせてあげよう。
「大丈夫だよ好実、好実の魅力は、その小さな胸に収まりきらないほど沢山ぐぺらっ!」
「斎藤、川ってどっちの方向?」
「そこの雑木林の先だ」
「捨てる気⁉︎ 犬や猫のように僕を川に捨てる気⁉︎」
「そこの崖から突き落とした方が早くないか?」
「やめて、円滑に処理する方法を今の好実に教えないで!」
「ふぅ、お待たせしました」
川に生徒会副会長の白君を捨てて来た新妻さんは、どこかほっこりした表情をしていた。
「いい? 今度余計な事を言ったら、崖から突き落としたあとに川に捨てるからね?」
「肝に銘じておきます」
体の丈夫さに定評がある僕でも、命はないだろう。
「ふふ、やっぱり、その顔、間違いない………」
どこか含みのある表情で僕を見つめる新妻さん。
……なんというか、艶っぽいというか、色っぽいというか、昨日までの新妻さんと何か違う気がする。
「高橋先輩、私、あなたのことが……」
「わーーーー!!!!!」
「ど、どうしたの、好実、急に大声だして?」
「いや、その、な、なんでもないわよ、あんたはそこでのたれ死んでなさい!」
「……………」
「……照れ隠しにしても、もっと言い方があるだろ」
どうして彼女は、僕に対してとても攻撃的なのだろう。
「なるほど、仲はよろしいのに、発展しない理由が分かりました」
新妻さんは、好実を見つめながら話を続ける。
「けれど、私は違います」
トコトコと新妻さんが僕に向かって歩いてくる。
そして、ぐっ、と僕に顔を寄せて来た。
「んっ………」
「ふぇ?」




