第五十九話 犯人
『残り20名となりました』
アナウンスが、戦闘訓練場である森の中に響き渡った。
……戦闘訓練が開始してどのくらい立ったのかしら。
もう既に3人の中学生が、私の発信器に誘われ戦闘を挑んできた。
どの中学生も、慣れていない召喚獣での戦闘なのによく頑張っている。私が挑んできた中学生と同じ年齢の頃だっのなら負けていたかも知れない。
このままこの場所を動かなかったら、次々に中学生が戦闘を仕掛けてくるだろう。
消耗線になれば、不利なのは間違い無く私の方。
だけど、誘き出すことが目的だから、私はこの場所を離れるわけにはいかない。
私は、決闘状にも似た手紙を書いたその人をずっと待っていた。
誰がその手紙を書いたのか検討は付いているけれど。
「……こんにちは、好実さん。今日は良いお天気ですね」
にこやかな笑顔で、トコトコと歩きながら、その人物は挨拶をしてきた。
……やっぱり、この子だったのね。
「……こんにちは、新妻さん」
中等部生徒会長、新妻桃。あの手紙を書き、私をこの自然教室に、戦闘実習に誘った人物。
「私、相手の目を見れば、だいたいその人が考えている事が分かるんです。小さい頃から父の顔の色を疑いながら生活をしていた後遺症的なものですかね。ですので、好実さんの考えていることも分かります」
顔に張り付いたような笑顔を崩すことなく、新妻さんは淡々と告げる。
「どうして、あんな手紙を書いたのか? ですね。理由は簡単です。勇気先輩を賭けて勝負がしたかったからです」
あのバカを賭けて、か。
この子、やっぱり私と同じ……。
「……勇気に利用価値なんてないわよ、ただのバカだもの」
ちなみにこれは私の心からの本心。
「ふふっ、利用価値だなんて。そんなことが理由じゃないってこと、好実先輩が一番分かっているんじゃないですか? ……だって、私と同じ目をしているのですから」
「………」
表面は笑顔だけど、その奥に感じる。確かな敵対心を。
「好実さんと同じです。……私は、勇気先輩の事が好きなのです」
その言葉を聞き、思わず眉を寄せてしまう。
私が最も恐れていた言葉を、彼女はさもそれが当たり前のように、何も恥ずかしがることなく告げた。
「ですので、私と決闘をしましょう、勇気先輩を賭けて」
改めてその言葉を口にする桃ちゃん。
私の答えはもうとっくの昔に決まっている。
あいつは私をなにもかもから救ってくれた。だから、その責任を取らせないといけない。
「その決闘、受け……」
『メェエエエ』
突然、動物の鳴き声が響き渡った。
今の鳴き声……羊?
いや、でも、どうしてこんな森の中に?
「こ、この鳴き声、まさか……⁉︎」
桃ちゃんの顔からは笑顔がなくなり、変わりに焦った表情に変化した。
「え、あの、私状況を把握できてないんだけど……」
「すみません好実さん! 話はまた後で!」
桃ちゃんはそう言うと、その小柄な体躯からは想像もできない程のスピードで、動物の鳴き声のした方へ駆けていった。




