第五十六話 恋
「ふぅ、なんとか倒せたな」
気を失って倒れている中学生を眺めながら、冬至はそう呟いた。
「……」
「そんな顔をするな。一様、こいつに見られないように頸動脈を狙ったから、バレてはいないし、『召喚士を攻撃してはならない』なんて規則もないからな。俺たちの作戦勝ちだ」
「いや、ルール的には問題ないかもしれないけど……」
協力した身分で言うのも変だけど、心に罪悪感が残っていた。
近くに木の影に設置されていたスピーカーから、キーキーと耳に残る機械音がなった。
『残り20名となりました』
戦闘実習場である、森の中にアナウンスが響き渡った。
あと20名。まだ30分程度しか経っていないのに、すでに3分の2まで人数が減ったことになる。
前回とは違い、人数が減るペースが段違いで早い。 僕たちの位置は、付けている発信器によって中学生達に伝わっている。もしかしたら、佐野くんみたいに僕たちを倒しに近づいてくる人もいるかもしれない。
「いや、近づいてくるやつは、おそらくいない」
僕の心を読んだのか、冬至はそう呟いた。
「どうして?」
「すでに30分経っているんだ、5分ごとに中学生たちに俺たちの位置情報が伝わるのに、今の所近づいてきたのは、さっきのガキだけだ。どうしてだと思う?」
「道に迷った」
「発信器の反応を追えばいいだけなのに、迷子になるやつなんてお前以外いない。……俺たち二人の反応がずっと近くにあるんだ、高校生の二人は協力している、って考えるのが普通じゃないか?」
「あー、なるほど」
流石に、年上の召喚士二人を相手取りたくないもんね。
「この状況で、俺たちに喧嘩を売ってくる奴なんて、アリスがいない事がわかっている奴だけだ………」
「……ほう、妖精女王はいないのですね。良い事を知りました」
突風が吹いた。
まともに立っていられないほどの、強い突風が。
「ぐおぉ!」
「んなっ!」
1メートルほど吹っ飛ばされる僕と冬至。
あわてて声が発せられた先を見ると、白髪の少年が、凛とした姿で立っていた。
「佐野君との戦いを見させてもらいました。妖精女王の姿が見えなかったので、まさかとは思っていたのですが……」
ずっと、僕たちと佐野君の戦いを見ていた?
……つまり、僕の犬のコスプレも……。
「急に顔を赤くしてどうしたんだ、恋か?」
「冬至、貴様は背中に気をつけた方がいい」
アリスがいない事がバレたのはこいつのお喋りのせいだって言うのに、どうしてこんな下劣で最低な事が言えるんだ……!
「自己紹介をさせていただきます。僕の名前は、武 白中等部生徒会の副会長を担当しています」




