第五十五話 VS炎の精霊 その③
今にも放たれそうな火球を見つめながら、僕は思考を巡らせていた。
今の僕の手札は、ヒヨコ1匹だけ。
ヒヨコを盾にする……はだめだ。 ヒヨコ程度の盾であの巨大な火球の勢いを殺せるわけがない。
ヒヨコを投げてターゲットを絞る……は普通にヒヨコがチキンになった後に僕がまた狙われるから意味がない。
くそぅ、何か突破口はないのか……!
『ピヨ!』
どうして、そんな勇ましい表情ができるんだ……! このままじゃ冗談抜きでチキンになってしまうっていうのに……!
「……あっ」
視界の端で、あるものが目に入った。
くそっ、あれにかけるしかないか……!
「ヒヨコ!」
『ピヨ!』
ヒヨコがじわじわと光り始めた。
その光は止まることを知らずに、直接見る事はできないほどの光量になる。
「な、なんだこの光は! ビームか、ビームを打ってくるつもりか⁉︎」
思わずたじろぐ佐野くん
僕が高等部上位に位置していることもあり、ただ光るだけの魔法だとは思わず、警戒心を前面にだしているのだろう。
ごめんね佐野くん。そんなに警戒しているけど、ヒヨコにできる事は、ただ光る事だけなんだ。それ以外まじで何もできないんだ。
「さぁ、僕の場所は分かるかな?」
あまりの光量に、まともに目を開けない佐野くん。
その表情は、最初の頃よりももっと怒りが混じっていた。
「俺を舐めるなよ……! サラマンダー、魔力を探知しろ!」
この召喚獣、こんなに威力の高い攻撃もできる上、魔力の探知までできるのか……!
とてつもないスペックを秘めている。
………だけど。
「……どうしたんだサラマンダー、早く探知を……」
「残念だったね、僕の召喚獣は魔力で探知なんてできないよ」
内蔵している魔力が低すぎて、とは言わないでおく。
「くそっ、もういい、周囲を焼き払え!」
サラマンダーから、直径3メートルにもなる火球が発射される。
しかし、うまく視認できなかったためか、火の玉は僕とヒヨコとは違う方向に飛んでいった。
「……いまだ!」
「ふっ、勝った気になるなよ、俺にはまだいくつも技の引き出しがぐぺぇ!」
突如、佐野くんが宙を舞った。
まるで芸術作品のように、綺麗な放物線を描きながら。
佐野くんを攻撃をしたその人物は、高々と右拳を掲げた。
「……これが、僕のもう1匹の召喚獣、斉藤冬至だ!」
彼の意識は、すでに飛んでいた。




