第五十四話 VS炎の精霊 その②
「新妻さんの、どんな所が好きなの?」
「す、好きじゃない、会長のことは別になんとも思ってない。 ……だけど、強いて言うのなら、一番の魅力は包容力だな。会長は、どんな生徒とも仲良くなれるんだ、誰にでも優しくて、誰にでも手を差し伸べて、そして友達になる。会長のそんな所に、俺は……」
新妻さんのこと語り始める佐野くん。
……あの手しか、この状況を切り抜けられる策はない。 とにかく時間を稼がなくては!
「たまに、会長は悲しい顔をするんだ、一人の時に。そんな会長の姿を見て、俺は助けてあげたいと思った、この方の力になれるのならなんだってする。本当の意味で心を開いてくれるのならその全てを受け入れてみせる。そんな覚悟で俺は生徒会に入ったんだ」
も、もう少し、もう少しだけ時間を稼ぐ必要がある。
「だからこそ、高橋勇気。お前のことが許せない。会長の心を開こうとしているお前を……!」
いや、一体何のことを言っているんだ。僕と新妻さんはそんな関係じゃないのに!
だけど、僕の話を聞いてくれそうにない。
「くたばれ! 高橋勇気!」
サラマンダーの周りに、炎が集まり始める。
くそっ、やるしかない!
目を閉じ、精神を集中させる、
……見える、魔力の流れが。サラマンダーの周りに流れている魔力が……!
「なっ!」
驚きの声を上げたのは、佐野くん。
皇さんと戦闘した時に使用した、瞬間移転術を使って、サラマンダーの位置を少し移動させた。
サラマンダーは位置が移動されたことで狙いが定まらず、火の玉はあらぬ方向へ飛んで行った。
「な、なんだ、今のは! 何をした!」
動揺する佐野くん。
たしか皇さんは『この技を見たのはこれで二回目だ』って言っていた。軍に長く所属し、多くの戦闘経験を積んでいる彼がそう言っていたんだ。この技は結構珍しいものなんだろう。
「さぁ、どうだろうね?」
「くそ、とぼけやがって……!」
敵対心剥き出しで僕を睨みつける佐野くん。
「サラマンダー、全てを焼き尽くせ!」
佐野くんの指示通り、サラマンダーはまた炎を集め始めた。
先程とは、比べ物にならないほどの炎を。
「貴様の周囲を焼きくつす! 今度は逃がさないからな!」
サラマンダーに集まる炎は止まることを知らずに、どんどん大きくなってゆく。
………もう少しだ。
「放て、サラマンダー!」
「………きた!」
サラマンダーが直径3メートルにもなる球状の炎を放とうとした時、その時は訪れた。
「こい、ヒヨコ!」
『ピヨ!』
やっと……。 やっと瞬間移動術で呼び寄せることができる位置まで戻ってきた……。
ヒヨコが高く飛びすぎて、瞬間移動術の範囲外だったけど、重力に従い落ちてきたヒヨコをなんとか移動してくることができた。
「よし、これで……」
『ピヨ』
「………」
『ピヨ?』
「……どうすればいいんだろう」
そうだった、このヒヨコ、役に立たないんだった……!




