第五十二話 絶体絶命
『おーい、高橋勇気! いるのは分かっているぞ!』
戦闘実習が開始して5分、すぐに近くで僕を呼ぶ声がする。
「ど、どうするの冬至!」
僕が慌てながらそう聞くと、冬至はやれやれとため息をついた。
「どうするもなにも、普通に戦えばいいだろ。アリスがいる以上、負ける要素がない」
そ、そうだった、今はヒヨコだけじゃなく、冬至の召喚獣である妖精女王のアリスが味方をしてくれているんだった。
前回の戦闘実習では、魔法一つで森を吹き飛ばした。そのレベルの魔法が扱えるのは日本ではアリスぐらいのものだ。中学生相手に負けるとは考えられない。
冬至は、パチンと指を鳴らした。
「アリス、出番だ。 さっそくで悪いが、さくっとあいつを……」
冬至と共に後方!に振り返ると、ヒヨコにアリスが跨っていた。
『さぁ、いくわよ、かいぜる!』
『ピヨ! ……ピヨ?』
『どこにいくかって? そんなの、きまってるじゃない! あのたいようよりもたかいところによ!』
『ピヨ!』
『しゅっぱつ、しんこう!』
『ピヨ!!!』
アリスの強化魔法を受けたヒヨコは、それはもうとんでもないスピードで真上に飛んで行った。
「「…………」」
『おーい、どこにいる!』
「ご指名だぞ、はやくいけ!」
「うるさい! 貴様のせいでこんな状況になったんだろ!」
「お前のヒヨコにも責任があるだろ!」
バレないようにコソコソ声で言い争う僕たち。
くそ、このアホと組んだのがそもそもの間違いだった……!
「仕方ない、あの作戦でいくぞ!」
「あたかも僕も知っている風に言わないで! 何も知らないよ!」
「囮作戦だ!」
「それ僕が囮なるやつだろ! 絶対に嫌だ!」
「仕方がない、だったら……」
ゴニョゴニョと耳元で作戦を伝えられる。
「………本当にやるの?」
「やるしかない、やらなかったら、俺たちは奉仕活動確定だ」
「ぐっ……!」
くそ、これ以上の作戦を思いつくことは僕にはできない、従うしかないのか……⁉︎
「よし、手を出せ」
「うん、勝っても負けてもいいっこなしだね」
右拳を合わせる僕と冬至。
これによって、運命が決める
「「じゃんけん ぽん!」」
僕たちは、草をかき分け、その人物の前に躍り出た。
「おーい、どこだ…… やっと、姿を現したな」
その人物は、赤髪をピンとワックスで上で固めており、その目からは警戒心と、敵対心を感じる。
「またせて悪かったな」
「……斎藤冬至か、高橋勇気はどこだ?」
「さぁな、どっかでくたばってるんじゃないか?」
「くっ、話す気はないんだな! ……高橋勇気といつも一緒にいる貴様を倒せば、あいつも出てくるはずだ!」
「おちつけ中坊、まずは俺の召喚獣を紹介しよう」
冬至は、パンパンと手を叩いた。
かいぜる、はヒヨコの本名です。




