第五十話 優勝賞品
自然教室で行われる自然実習は、俗に言うバトルロイヤルみたいなもの。
参加する召喚士は、だいたい半径1キロほどのまるい森の中にランダムに配置され、出会った召喚士同士で戦い、負けたものから抜けてゆく。そして最後の一人になるまで戦闘を続ける。
しかし、これだけ範囲が広いと、なかなか召喚士同士が鉢合わせなくなる。
そのため、だんだんと範囲を狭め、召喚士同士を合わせやすくする。
『もう全員くじを引いたか?』
上垣先生が、大きい声でそう言った。
僕たちは今、最初の配置場所を決めるためのくじを引いていた。
この戦闘実習は、二つの褒賞がある。
まず一つ目に優勝褒賞、そして、最も活躍した者に与えられる最優秀褒賞がある。
この最優秀褒賞は、自分よりも強いとされる召喚士と召喚獣を倒したり、より多くの召喚士、召喚獣を倒した者に贈られることが多いい。
そのため、くじで各個人に配置場所が指定され、対戦相手達に場所を知られないようにしているらしい。
『この実習はあくまで訓練。無理をせず、何か異変を感じたら、すぐに配布した発煙筒を使用するように、すぐに救護班が駆けつけける』
すぐそばのテントには、青いパーカーを着た数名の救護班と、治療に足けた召喚獣たちが鎮座している。冬至が言うには、死以外の怪我ならたちまち直してくれるらしい。
「そうだ勇気、言い忘れていたことがあった」
「ん、なに?」
「俺たち高校生は、ハンデとして常に位置が中学生たちに共有されるらしいぞ、そらっ」
「うわっ、と」
冬至が投げた、小型の発信機を慌てて受け取る。
「それを体のどこかにつけとけだとよ」
冬至を見てみる、服の襟部分にちょこんと付いていた。
どこでもいいらしいし、とりあえずポケットにでも入れておこうかな。
「冬至は、今回、優勝を狙うの?」
「ん、まぁ、今から紹介される賞品次第だな」
「ま、そりゃそうだよね」
『えー、では今回の褒賞を発表する』
上垣先生は、天高くそれを掲げた。
『図書カードだ!』
『『『………』』』
静まり返る会場。
……欲しくないわけじゃないけど、苦労してまで欲しいかと言われればそうでもない。
なんというか、役者不足な気がする。
『と、もう一つある』
そして、またそれも点高く掲げた。
茶色く、そして丸い物体が、可愛くラッピングされている。
あ、あれは、まさか……⁉︎
『クッキーだ!』
『『『ふざけるな!』』』
非難の声をあげる中学生達。
たしかに優勝賞品が、図書カードと手作り感満載のクッキーじゃ、いくらなんでも弱すぎる。
苦労して優勝しても、そのリターンがその二つじゃ、やるきなんて起きるわけがない。中学生達が怒るのももっともだ。
『……あの』
上垣先生が乗っている壇上に、生徒会長の新妻さんが登ってきた。
『例年と報酬が違うので、せめてもとクッキーを焼いてみたのですが……、その、よかったら良いので、いただいてほしいです……』
『『『よっしゃぁ!!』』』
途端に、中学生達はやる気に満ちた。
ある者は準備体操を、ある者はドラミングをし、体に気合をいれている。それほど、報酬の価値が、新妻さんの手作りクッキーによって上昇したのだろう。
新妻さんは中等部のアイドル的存在。クッキーを作ったとなれば、やる気が出ない方がおかしいだろう。
だけど、それは中学生に限った話だ。
「パスだな」
冬至は、顔色ひとつ変えずにそう言った。
「やっぱり、冬至は新妻さんのクッキーに興味ないんだね」
「あんなもん、小麦粉と砂糖とバターを混ぜて焼いただけだ、いつでも自分で作れる」
『ちなみにだが、高校生は10位内に入れなかったらペナルティーだ、奉仕活動を増やす』
「くそっ、見透かしてやがったな……!」
上垣先生、僕たちがやる気を起こさないのを見越して、ルールを追加したな……!




