第四十六話 天体観測
夕食が終わり、時刻は九時過ぎ、天体観測をするため自然教室の建物の屋上にチラホラと中学生が集まり始める頃だろう。
天体観測に関しては自由参加で、講師による星座の説明を聞きたい人だけ屋上に集まっている。
別に興味がない人は、もう就寝したり、散歩したり、遊んだりと自由行動に勤しんでいる。
ここ『召喚士育成学校附属自然の家』には、絶景ポイントが沢山ある。
小さい丘から見る自然の景色や、山頂の展望台から見える街の夜景。そして、自然教室の屋上から見る星座。
そして、その絶景ポイントは、また別の呼称も存在する。
「……『最高の告白タイム』、ロケーション、タイミング共に最高よね。……告白をするとしたら今しかないって思えるほどに」
好実は、そう言いながら、テーブルに突っ伏した。
「どうしたの好実、ぐたぁってしちゃって」
「……中学生達の相手をしててね、なかなか引いてくれなくて疲れちゃった」
相手をしていたってことは、つまり告白的なことされたってことだろう。
「へぇー、そうなんだ、大変だね」
たしかに、好実はスレンダー美人だし、面倒見もいいから、告白されてもおかしくはない。
「……なんとも思わないのね」
「ん?」
「なんでもない、モテないあんたには一生わからないことよ」
むっ。
「そんなことないよ、僕だって告白されたことぐべらぁ!」
「え、なに? 告白されたの?」
「すみまぜん! すこし見栄を張っただけです!」
あ、危なかった、もう少しで死んだじいちゃんと再開するところだった……!
「すー、はぁー、すー、はぁー」
お腹いっぱいに空気を吸い込むと、自然の香りが身体中に広がった。
空を見上げると、真っ黒な夜空を、月と小さな星達が彩っている。
気分転換に近くの丘まで来てみたけど、この景色、見ることができて良かった。
『ピヨピヨピヨピヨ』
ヒヨコも楽しそうに草を突いて遊んでいる。
『ねー、あの人って……』
『レクレーションの時に会長と戦ってた……』
『わー、本当にヒヨコだ。……どうしてリードに繋がれているの?』
僕とヒヨコの周りに中学生達が集まってきた。ヒヨコに至っては、犬のようにゴロリと仰向けになってお腹を触らせている。
……なんというか、有名人になって気分だ。
『ピヨっ』
ヒヨコが、クイっとズボンの裾を引っ張ってきた。
『ピヨピヨ! ピヨ!』
ふむふむなるほど。
何言ってるか一つも分からないや。
「ヒヨコさんは、リードを外して欲しい、って言ってますよ」
『ピヨ!』
少女はそう言うと、ヒヨコの首元につけていたリードをカチャっと外した。
自由を手に入れたヒヨコは、小さい足からは想像もつかないスピードで草むらを走り始めた。
『あしはや!』
『……かわいい』
『ちょっと、まてい!』
中学生達は、ヒヨコの後を追って姿を消していった。
一人の少女を残して。
「こんばんは、高橋先輩」
新妻さんは、ニコっと笑顔を見せた。




