第四十二話 VSワイバーン
……今、僕が考えなくちゃいけないのは、どうやって勝つかじゃない。
どうやって負けるか、だ。
先輩という立場上、無様に負けてしまっては、これからの自然教室で舐められてしまう。
『ピヨッ!』
だからどうしてそんなに勇ましい表情ができるんだ、お前如きがワイバーン勝てるわけがないっていうのに……!
「先輩、たしか高等部一年のランキング一位ですよね」
ランキング一位?
……そうだった、一度好実の召喚獣の能力で、僕が好実に勝利して、ランキング一位になった、ていう記憶が、そもそも戦っていない、って記憶に上書きされた。。
そして、その記憶が元に戻されたから一位って記憶が残ってるんだ。
『うぉおおお、まじかよ!』
『あのアホヅラがランキング一位⁉︎』
『いけ、一位をぶっとばせ!』
さらに熱狂する中学生たち。
くそう! ますます負けられない雰囲気になってしまった!
「ワイバーン! 炎ブレスです」
新妻さんがそう言うと、ワイバーンの口元から炎が溢れ出す。
「っなっ!」
そして、吐き出された炎を見て、おもわずたじろいでしまう僕。
攻撃範囲が広すぎる……⁉︎
好実のグリフォンの風魔法の何倍もの範囲の炎ブレスが、ヒヨコに襲いかかる。
くっ、だめだ、瞬間移動術が間に合わない……!
『ピヨォォ!』
ああ、僕の召喚獣がロティサリーチキンになってしまった。
「え?」
……おかしい、ヒヨコが平気な顔をして二本の足で立っている。
何が起こったんだ。高威力広範囲の炎ブレスは、たしかにヒヨコに命中したはずなのに……。
「ワイバーン、もう一度炎ブレスです!」
冷静にワイバーンに指示する新妻さん。
『ガッ‼︎』
もう一度炎ブレスが発射される。
『ピヨ!』
そして、今度はちゃんと目視できた。
ヒヨコが、とんでもないスピードで炎ブレスを避けていた。
よく見ると、ヒヨコの体が紫色に光っている。
この紫色の光は、たしか……。
後ろに振り返る僕。そこには、冬至の召喚獣ありすがふわふわと浮いていた。
『かいぜる! わたしがとびっきりのきょうかまほうをかけたから、そんなよわっぴなんてかんたんにたおせるわよ!』
『ピヨッ!』
手羽先を、グッと突き出すヒヨコ。
なるほど、ヒヨコの身体能力が上がっていた理由は、強化魔法が掛けられていたからだったんだ。
それも、妖精女王の強化魔法、おそらく今のヒヨコは世界トップクラスの身体能力を身に宿している。
(ヒヨコ、今なら勝てる! 全力でいくよ!)
(ピヨ!)
新妻さんには悪いけど、僕にも負けられない戦いがあるんだ……‼︎
『ピヨォォ‼︎』
グググ、と足をバネのよう縮めるヒヨコ。
その目は、しっかりと宙を舞っているワイバーンを捉えている。
「飛べ、ヒヨコ!」
『ピヨ!』
まるでミサイルのような速さで、ワイバーンに向かって突撃するヒヨコ。
「ワイバーン、避けて!」
『ガ⁉︎』
カンッ、とワイバーンの尻尾にかすった。
くそ、避けられてしまった。だけど、まだまだこれからだ。第二、第三のヒヨコミサイルがワイバーンを襲う……。
「あ……」
ヒヨコが戻ってこない。
天空に向かって発射されたヒヨコは、止まることを知らずに、どこまでも飛び続けた。
「あ、あの、先輩。ヒヨコさんは?」
新妻さんが、困った表情で僕に問いかける。
「……、今回は、僕の負けのようだね」
ギザな態度で、僕はそう返答した。




