第十三話 誰も覚えてない
「そもそも可井君と戦ってないじゃない」
「い、いや、僕は確かに戦ったよ! 試合の後、安藤さんと、『あなたが勝てるわけがない!』ってもめたじゃないか!」
「あんた、頭でも打ったんじゃないの?」
僕の足は、勝手に動いていた。
学校に戻り、色々な人に確認した。
先生、クラスメイト、友達。
その誰もが、安藤さんと同じ答えを出した。
そして……悪友さえも。
「何を言ってんだ、お前、昨日はそもそも試合やってないじゃないか」
「や、やったよ! ほら、ヒヨコを見て、バイブレーションしてるでしょ? 恐怖が体に刻み込まれてるんだよ」
「鳩と戦った後もしてるだろ」
「し、してるけど! 本当に覚えてないの⁉︎ 冬至が、可井君について調べたいって交渉してきたんじゃないか!」
冬至は、10秒ほどじっくり考えたあと、静かに顔を上げた。
「……記憶にないな」
「そ、そんなわけっ…… そ、そうだ、好なら覚えているはず!」
乱暴に通学バックからスマホを取り出し、LINEを開いた。
そして、僕の心は、奈落の底に突き落とされた。
「……ない、好の連絡先がない……」
昨日まで一番上に欄に鎮座していた、好の連絡先が消えていた。
画面をスライドさせて、何度も何度もさがしたが、見つけることができなかった。
嫌な予感が身体中を巡る。
……聞きたくない、聞きたくないけど、確認しなくちゃいけない。
「と、冬至」
「………」
「相川好って、僕たちの親友のこと……」
「………」
「覚えてるよね?」
「………だれだ? そいつ」
僕は、好の電話番号に何度もコールした。
でも、帰ってくる返事は、人間の声じゃななかった。
……もう、分かってるんだ、僕自身が認めたくないだけなんだ。
全ての人間が、記憶を改竄されている。
可井君と試合をしたこと、そして、好のことを。
そして、なぜか、僕だけは記憶を改竄されていない。
僕は、ただ立ち尽くしていた。
短いです。ごめんなさい




